第54話Regrets - 未練

54.



 "My Feeling 胸の内4"



== 眞奈の父親(松本浩志) + 眞奈の母親(松本綾子) ==



 私は実をいうと、瑛士くんのしたことをとやかく言う資格の無い

人間なのだ。


 娘と妻、どちらの苦しみが大きいのだろう。

 夫の心を他所の女に持っていかれて、どちらの苦しみが大きいとか

意味の無い比較なのは重々分かっているのに、こんな事を平気で

比べてみたりする私はそういう嫌な人間なのだ。



 娘の心からの苦しみを知った時、私は瑛士くんを娘以上に憎み

心の中で罵倒した。愛娘を不幸にされ辛かった。



 それなのに・・。


 妻に、私はそれ以上のことをしていたにも関わらず妻に対して

娘に対するのと同様に妻の心に寄り添ったことがあっただろうか。



 自分こそが妻を苦しめていた諸悪の根源なのに、妻の怒りや

苦しみ悲しみというものにこれまで寄り添ってきたと自信をもって

いえるだろうか。


 妻の父親からすれば、私はとんでもない男だなぁ。


 瑛士くんと娘のことで、初めて妻の苦しみそして妻の両親の大きな

悲しみを理解できた思いがする。



 瑛士くんに文句を言えるような人間じゃないことは重々承知しているが

それでも文句を言わずにはいられなかった。


 それにしても・・。



 今思えば私は、妻の気持ちを置き去りにしてきてのだなぁ~と思い至った。


 あの事件から何年になるだろうか!

 私たちはアラ還をとうに過ぎ、所謂世間で言うところの年金受給者暮らしに

突入している年金生活者だ。


 娘の眞奈の結婚生活が順風満帆であったなら、今のように昔のことを

振り返ることもなかったかもしれない。それ位私の中では昔のことになって

いたのだが果たして妻はどうだったのだろうという想いに至った。


 娘のことで私たち夫婦の事を振り返ることになって、今まで身近に感じていた

妻が実は遠くにいたのかもしれないと思うようになってきた。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る