第28話Regrets - 未練

28.


 "Single Flower 一輪の花1"

 


== 住職の妻 + 松本眞奈 + 神崎 蓮 ==




  飄々と咲いていた一輪の花が、瑞々しさを加えてこれでもかと

言わんばかりに凛々しく咲き誇っていたのに、今ではしおれてしまって

今にも枯れてしまいそな風情で咲いている。


 あれから10日余り。見てられないほどだわね。

 人の恋路・・こればっかりは、歯がゆいけれどどうしてあげることも

できないのよね。私の話が下手糞なばかりに、ごめんね蓮さん。


 私にできるのは、せめておいしい食事を作ることくらいなんだけど

ここのところ蓮さんの食が進んでなくて、とても心配。


 あれから眞奈さんからの連絡もないみたいだし。


 人の事、言えた義理じゃないけどやっぱり前科があるって愛だけじゃ

乗り越えられないモノなの? 私だったら、この両手で蓮さんを受け止めて

あげるのに・・などと、夫のいることをつい忘れて私はそんなふうに

考えたりした。


 夫が知ったら離縁されるかも。

 蓮さんが知ったら、気持ち悪がられるかも。(泣;)


・・・




 久しぶりに訪れたお寺・・には、恋しい蓮さんの姿があった。

見つけた・・そしてほっとした。



 私は蓮さんのいるところまで、そーっとそーっと近づいていった。

 住居の広縁を上がり部屋の中へと歩を進め射程内に蓮さんを捉え

何やら瞑想中の蓮さんの背中にしがみ付いた。


 こんなことして、ここが外国だったら射殺されてたかも、だね。

そんなつまんないことを頭で考えながら一生懸命彼の背中にしがみ

ついたのだった。



 蓮さんはすぐには何も言葉を発しなかった。

 わっとか、えっとか、ひと言も。



 なのに、なのに、しがみついたのが誰かもしれないのに、振り払おうとも

せず、眞奈・・って呟いた。私じゃなかったら大恥かくとこだよ蓮さんったら。




「私ぃ、蓮さんから離れないから。絶対ぜったい離れないからね。

今日はね、これを宣言しに来たの。蓮さんの悲しみを私に分けて。

蓮さんが私の悲しみを分かち合ってくれたように」



「眞奈、私は怖い人間なんだ」





-811-

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る