第29話Regrets - 未練

29.

 "Single Flower 一輪の花2"

 


== 松本眞奈 + 神崎 蓮 ==




 「私知ってる」



「・・」




「蓮さんはやさしい人だわ」




「何聞いてたんだ・・話、聞いたろ?」



「聞きました。いろいろとショックだった。蓮さんの意図が読めなくて。

だけど蓮さんの意図なんてもどうでもいいわよ。私の・・自分の気持ちが

大事。私はこれからも蓮さんの側にいるって決めたの。離れないから」




 「俺は盛大に暴力を振るえる人間なんだよ。自分でもあんな狂気が

自分の中にあったなんて、今でも信じられないけどね。俺がゴルフの

ドライバーで渾身の力を込めて何度も打ち付けた相手、どうなったと思う?」



「・・」



「片方の目は失明して、顔面を酷く損傷、前歯欠損。脚で蹴り上げた

急所は折れて重症。もう子供は望めないだろうという話だった。俺は

凶暴でおそろしい人間なんだ。警察の来るのが後少し遅かったら妻に

だって手をかけていたかもしれない。自分がおそろしいよ」




 話すと当時のことが蘇るのかもしれなくて、蓮さんの声は少し

震えて聞こえてきた。

 一番傷ついていたのは紛れもなく蓮さんだ。

 一番苦しいのも蓮さんだ。


 私は苦悩する蓮さんの姿に、元奥さんのことを憎いと思った。

 これは嫉妬と呼ばれる感情なのかもしれない。




「蓮さんっ、過去を忘れることはできないし、無かったことには

できないけど、私といっしょにこの先は楽しいことを増やして

いきましょうよ」



 私はもっともっと、蓮さんを慰め励ましたかったけれど

上手い言葉が見つからなくてそんな自分の言語力の無さが

もどかしかった。


 私たちの間に結婚の2文字は出なかったけれど、私はただ蓮さんの

側にいられるだけで良かった。



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