第11話Regrets - 未練

11.


"出会い4"


(2ケ月後の回想記)


== 樋口眞奈 + 神崎 蓮==



蓮さんの勤めるお寺さんは、敷地面積が半端なく広かった。私が行くのは

会社帰りか休日の土・日のどちらかで、平日の昼間の様子は分からないの

だけれど、私がお寺さんに行くときは大抵蓮さんひとりだったこともあり

遠慮がなく、行きやすかったのも幸いした。


 自分の中の悲しみだとか、泣いているところを見られた恥ずかしさ

だとか、そんなことに気をとられて気付かなかったのだが、蓮さんのっていう

言い方はおかしいけど、私の中では蓮さんのお寺なので・・蓮さんの勤めていて

住んでいるお寺は非常に景観にも優れていた。


 何と何と、オーシャンビューが望めて最高の立地。海を眺めに来るだけでも

値打ちあるわぁ~なんて、いつだったかの帰りそんな素敵な感傷に浸ったり

したことも。


 そうそう、2度目の来訪時にはまた少し蓮さんとお話して、夫がLINEだけ

じゃなくてデートもしているって話したら・・前回と同じように蓮さんが

唱えるお経の横で私も夫に向けた雑言を唱えることになった。。


 "瑛士、他所の女とデートなんかするんじゃない許さんぞ バカヤロウ "


 私は只管、蓮さんの声音に重ねるように一心不乱に唱えた。



 「えらいまた、今日は・・熱心に唱えてたね」



「勿論です。私のストレス発散、悩みごとからの魂の開放ですからっ」



「で? 今日はどうでしたか? 魂は穏やかになった?」



「なりました。思うに、ひとりではこうはいかないと思います。蓮さんの

修行の末に培われた素晴らしいお経に被せているからこその心の平安が

訪れるのだと思います」



「なんとまぁ、あなたは何とも有難い言葉を私にくれるもんですなぁ~。

いや、こちらこそ、有難い言葉を頂戴して・・ありがとう。ところでどうです?

今日は運動を兼ねて本堂の掃除などしてみませんか? ご利益があるかもしれないよ?」


 私は蓮さんの有難い提案に即刻喰いついた。私には頭や心を働かせるより身体を

使いほどほどに疲れさせることで、夜熟睡できることが何よりの日にち薬だった

から。


 蓮さんはそんな私に掃除を一緒にすることでそっと寄り添ってくれた。

蓮さんと同じ部屋を一緒に拭き掃除することは、何か神聖な作業に思えて

充足感まで与えられ、家に着く頃には、本当に私の心はすごく癒されていたの

だった。



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