第10話Regrets - 未練

10.


"出会い3"


(2ケ月後の回想記)


== 樋口眞奈 + 神崎 蓮==



 蓮さんから誘われて初めてお寺に行った日、部屋の中に招いていただいた。

所謂本堂ではなくて、そのお寺さんには本堂に似た作りの別棟の家屋があって

そちらに入らせていただいたのだ。広い板の間と畳のある部屋が数室ある

ようだった。



 「よく、来たね」


 「来ると思ってました?」



「さぁ、どうだろう。来てくれればさぞかし楽しかろうと思ってましたよ」


「はぁ~ぁ、泣き叫んでた女なのにぃ?」



「ははっ、これまた自分のことをよく客観視できていて安心した」



「先日はお見苦しいところをお見せしてしまいすみませんでした。

それに子供じゃあるまいし勝手に人様の土地にある土管なるものを使用して

しまいまして、面目もございません。お恥ずかしい限りですわ」



「で? 取り乱していた理由、今日は説明できそうですか?」



 「話せば長く支離滅裂になってしまいそうで、怖くてまだお話できません」



「簡単になら話せそうですか」



「夫が他所の女性とエッチなLINEしてます」



「分かりました。ではわたしがこれからお経をあげますからあなたは

私の横でお経に合わせて "夫よ、他所の女とLINEなんかするんじゃない

許さんぞ" と一緒にその文言でお経を一緒にあげましょう。

 いいですか、始めますよ」



 蓮さんはそう私に指示すると私に背を向けて本物のお経を唱え始めた。

 私は蓮さんの作ってくれた文言がとっても気に入ってしまった。


 時間にすると軽く10分は唱えただろうか・・。

 "瑛士、他所の女とLINEなんかするんじゃない許さんぞ"唱えているうちに

私は文言を少し変えた。


 "瑛士、他所の女とLINEなんかするんじゃない許さんぞ バカヤロウ "


 お経を唱え終えた時、なんだか胸がすぅ~っとしたことを覚えている。


 この時のスッキリ感が私にとっては麻薬のように・・癒しのように・・

じわじわ効いて忘れられなくて、あれからずっと蓮さんの元へ通っているような

気がする。




-805-

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る