新side 2
「後麻希の知り合いかぁ……。あぁ、彼女なんて良いんじゃないかな。
確か幼馴染みだったよね? 新、月島さんに聞いてみてくれない?
恵莉には僕が聞いたからさ」
気を取り直して、というように修はそう言った。
「えぇ……。私、確実にアノ人には嫌われてますよ。修サン聞いて」
「ちょっとトイレ行ってくるね」
皆まで言い終わる前に、彼は退席した。大方、彼女に電話をかけたくないのだろう。
彼女……月島紗月は、私のことが嫌いだ。
別に表立って言われた訳ではないが、私と話す時の様子を見ればわかる。
彼女の黒目がちな瞳はいつも冷え切っているし、笑顔を見せてくれたことは一度もない。
まぁ、別に見たいと思ったこともないが。
しかし、癪なことに彼女は恵まれている。
天運にも、境遇にも。
例えば彼女の兄、氷川晴斗は私達の会社を経営する若社長である。
故に彼女には、迂闊にあれこれ言えない。同い年であるのに気を遣わなければならないなんて、面倒にも程がある。
それに彼女本人も、株で巨額の富を築いている。
噂で聞く限りでは、彼女一代では一生かかっても使い切れない額なのだそうだ。
私なんて、金欲しさ余りに借金を取り立てたりする裏稼業にも手を染めたのに。
何たる格差社会であろうか。人生、平等ではないことを痛感する。
恐らく、彼女が私のことを嫌うのは裏稼業の件が中心であろう。
性格だって間違いなく合わないが、大方品性高潔な彼女のことだ。
裏稼業で汚い世界に踏み入れている人間など関わりたくないのだろう。
しかし、それでも今回は事情が事情だ。
確かに、彼女は麻希とも親しいし電話するしかない。
早く済ませてしまおう……。
そんな思いを内に秘め、自らの携帯を手に取り彼女の電話番号へとコールした。
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