新side 1

「それにしても、麻希とも知り合いで僕と新とも知り合い……かぁ」

修はそう呟き、しばらく考える素振りを見せた後

「あぁ、彼女なんてどうかな。恵莉」

と、少しためらいがちに提案してきた。

確かに、恵莉__苗字は青山というけれど……は、私と二人の共通の知人だ。

やや青緑色がかった瞳を「これでもか!」という位の執念で極限まで大きく見せている。

本人は

「素顔は地味だから……」

と以前語っていたが、すっぴんの方が男ウケが良さそうな顔をしている。

しかし、本人がその点に気づいていないのが悔やまれる。

それさえ除けば、彼女は渋谷の街にでも居そうな女子大生である。

確かにやや緩めに巻かれたサイドテールはそれだけでも目立つし、

ネックレスの色も原色ばかりで目には優しくないのだが。

「ソーデスネ、彼女今日仕事でしたっけ」

面倒なことになりそうだ、と思いながらも尋ねる。

これで仕事、となると彼女の勤め先__渋谷109まで行かなくてはならないので気が重い。ましてや恵莉は、私の彼女だ。気まずい雰囲気が流れるのは、容易に想像できる。

サラリーマンが突入するには、あの場所は難易度が高いように思える。

「んー、わかんない。ちょっと電話かけてみるよ」

修はそう言い携帯を取り出し、電話をかけた。

「……あ、もしもし。恵莉?今日は仕事?……あぁ、でもすぐ終わるから。

……ねぇ、麻希見てない?今日出勤してきてなくて……。……あぁ、そう……。

もし良かったら、恵莉の知り合いにも聞いてみてくれない?明日で良いから。

あ、わかった。じゃあ、仕事頑張ってね。じゃ」

どうやら電話は繋がったらしい。修は電話を終えるとこちらを向き

「見てないってさ……。いやぁ、たまたま休憩時間だから繋がったけど今日仕事みたいで機嫌悪かったなぁ……」

と、苦笑いで報告してきた。

「……ソーデスカ」

そう適当に返事をしながら少しばかり考える。


恵莉は本当に見ていなかったのだろうか?

修は男性だし、麻希は何か男性には言いづらいことがあったのかもしれない。

だからと言って恵莉に何か言付けしたりするとは限らないが。

……というか、これは憶測だから当たっているとも限らないのだ。

自分の憶測はともかく、これは一筋縄ではいかなさそうだ。


私は、心の中で悪態をついた。

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