第15話 彼と彼
少年の隣にはいつも彼がいた。
彼は泣きそうな顔で苦しみを吐き出した。
「ずっとおまえを見ていた。気づかなかっただろう。でも俺にはすべてわかっていた。おまえの感じている苦しさも、切なさも。だけどそこから救えなかった、それがなによりもくやしい。俺ではおまえを救うことなど無理だとわかっている。だけど、救いたかったんだ。おまえだからこそ。……俺はおまえを苦しめるものがなにか知っていた。それなのに俺はなにも……できなかった」
親友からの告白に、ショックを受けなかったと言えばウソになる。単純に驚いた。彼がこれほどまで自分を想っていてくれたことに。誰よりも彼を知っていると思い込んでいた自分に一番ショックを受けた。
気づかなかった。
常に隣にいたのに。
求めていた理解者が、すぐそこにいた事実に今さらながらショックを受けた。
どうして今、それを言うんだ。
なにもかも遅すぎる。
遅すぎる大事な告白を自覚してか、彼は目を伏せたまま謝った。
すまない、と謝る唇にためらわず唇を重ねた。
語る彼の唇を、今すぐ自分の物にしたかった。
そういう行動を取る自分にも、また驚いた。
時間の許す限り、彼と影を重ねていた。
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