どんなお店にも褒められる部分はあるのです

 Webライターとしてのお仕事で多いのは、お店の紹介です。

 たとえば、お酒を飲んだりディナーを楽しんだりできるお店を「イメージをよくして、お客さんがたくさん来るように褒めてください」というような依頼が頻繁に舞い込んできます。


 もちろん、元から評判のよいお店ならば簡単に記事が書けてしまいます。インターネット上の評価が高く、口コミでもよいことばかりが書かれているからです。

 次に、普通に営業しているお店。これも大丈夫。どうにかいい部分を見つけて、ドレスアップしてあげられます。

 ここまではいいのですが、中には非常に評判の悪いお店というのもあって、それをどうにかして褒めなければならないのですが、どうしても無理やりになってしまいがち。そこはどうにか工夫してやりくりするのですが、インターネット上で悪口しか書かれていないという場合もあって、これはほんとうに困ります。


 最終的には頭をひねりにひねって、どうにかこうにか欠点をオブラートに包み隠し、まるで素晴らしい雰囲気の店内に、人柄のよい店主、おいしいお酒と食事がふるまわれるリーズナブルな価格のお店のごとく紹介するのですが、そこが言葉の魔術というものです。

 さすがに嘘を書くわけにはいかないので、遠回しに否定しながら、読んでいる人にはさも素晴らしい店舗であるかのように勘違いさせるような文章を書いているのですが、果たしてそれが正しいことなのかどうか。


 正直、直接お店に出向いて「これだけ美辞びじ麗句れいくを並べ立てて、さも素晴らしい店舗のように書いたのだから、実際のサービスもそれに合わせて営業してください!」と一言文句をつけに行きたくなってしまうくらいです。

 もちろん、そんなことできるわけもないのですが。


 でも、ほんとうにお店そのものをどうにかするわけにはいかないのです。

 どんなに最高の記事を書いたとしても、実際にお客さんが足を運べば一発でバレてしまうはず。そうしたら記事を載せているサイトの評判も落ちるだろうし、書いている私の評価だって下がってしまうでしょう。


 まあ、私のことはいいんです。これがお仕事ですから。お金ももらってますし、何よりも依頼ですから。一度受けた依頼は、たとえそれがどのようなものであろうとも確実に遂行する気でやっています。そこは契約なのでいたしかたありません。

 けれども、依頼してきたお店の評判やその情報を掲載しているサイトの評判が下がるのはよくないことに思えるのです。わざわざ記事を読んで足を運んでくれているお客さんをだましているのに近い行為をしているのですから。長い目で見た時、それって大きな損をしてると思うんですよね。


 ただ、私にはそれに逆らうだけの力がありません。

 だって、しがないひとりのWebライターに過ぎないのですから。

「私、こんなところで何やってるんだろう?私がやりたかったのはこんなことだったのだろうか?私が本当にやりたいことはもっと別にあるんじゃないかな~?」

 そんな風にちょっぴり自己嫌悪におちいったりもするのでした。


 ただ、ひとついいこともありました。それは表現力のアップです。

 無理やりにでも悪評の立っているお店を褒めてきたおかげで、私の中の表現力がグングン上がっていきます。それが心から実感できるのです。きっと、いつかこの能力は小説を書くのに生かせるでしょう。

 それだけでも、やった価値はあるというもの。


「あの人が私にWebライターをやらせたのは、こういう理由だったのかな~?」と、書きかけの記事の表示されたノートパソコンの画面を眺めながら、ひとりお部屋の中でぼんやりと考えるのでした。

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