設定を極めれば、世界を構築できる!

 アレ?

 なんだろう?この感覚?


 それは、『ミコトとレン』の執筆中のできごとでした。

 突然、これまでとは全然違う感覚に襲われたのです。

 その感覚を言葉で説明するのは難しいのですが、無理に言葉にするならば、「世界を積み上げていく作業」とでもいえばいいのでしょうか?

 これまでの私は、小説を書く時にストーリーやキャラクターを重視して書いていました。

「この先のストーリーどうしよう?」とか「このキャラクターならば、このあとこう動くわよね?」とか、頭で考えたり、自然に生み出せたりしたのです。

 でも、今回は違うのです。それとは全然違う感覚。ストーリーでもキャラクターでもなく、全く違う部分で筆が進んでいき、それが楽しくて楽しくてたまらないのです。

 たとえば、物語の中に登場するお店の名前を考えたりだとか、そのお店ではどんな商品を売っているかだとか、そこで働いている人のお給料はいくらで、その収入で生活するにはどのくらい節約しなければならないとか、そのようなことです。

 そうして、そういったこまかい部分を無数に考えていくことで、世界がどんどん広がっていくのです。

 ストーリーもキャラクターも関係ありません。そこには誰が住んでいてもいいし、その人たちがどのような人生を歩んでいてもいいし。でも、決してストーリーやキャラクターが重要でないというわけではないんです。ただ、誰がどのような物語を展開していっても構わない、そういう感覚。

 わかります?言ってる意味?


 そのことをあの人に相談すると、こんな答えが返ってきました。

「それは設定だよ。君は設定のおもしろさに目覚めたのさ」

「設定?」

「そう。物の名前やその機能、使い方。街や学校や国。それらの名前や文化、文明。人々がどのような道具を使い、どのような生活を送っているのか?何を学び、何を食べて、どんな遊びにきょうじているのか?その世界に存在する全てを生み出すことのできる能力。それが設定さ」

「でも、それじゃあ、読んでいる人がつまらなくないですか?だって、みんな『どんな人が登場するんだろう?』とか『その人たちがどんな物語をつむぎ出してくれるのだろう?』とかを期待しながら読んでいるわけでしょ?説明ばっかりじゃ退屈しちゃうんじゃないですか?」

 私の言葉は、あの人によって即座に否定されました。

「そんなことはないさ!もちろん、全てが設定で埋め尽くされた小説は退屈でつまらないかもしれない。もはや、そんなものは小説とは言えないだろう。でも、君の書いている小説はそんなんじゃないだろう?ちゃんとキャラクターが生きていて、ストーリーが展開して、その合間あいま合間に設定がある。そうだろう?」

「確かに。読み返してみると、そうなっていますね」

「だから、卑下ひげする必要なんて全然ない!むしろ、堂々と胸を張り、自信を持っていい!君のその新しい力は、きっと君の小説を良い方向へと変えてくれる。設定をきわめれば、世界を構築できる!物語の世界そのものをゼロからつくり出すことができる!」

「設定を極めれば、世界を構築できる」と、私は繰り返します。

「そうだ!そうして、それはひとつの作品にとどまらない。一度生み出した設定は、別の物語でも使える。テーマが変わり、登場人物が変わり、ストーリーが変わっても、その世界観や設定だけは共通のものを使うことができる。きっと、それは君の強力な武器になる!兵器になる!」

 そんな風に言われると、なんだか私も自信がわいてきました。

 そうして、ますます物語の中のこまかい部分を考えるのが楽しくなってくるのでした。

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