6ー5

 恭しくお辞儀をして、向かいの席に座り直すバンシー。

 男は差し出されたものに目を通した。

 それはある写真が記載された記事だ。

 そういえばこの教会は新聞でみた教会じゃなかろうか。

 バンシーを見れば、察したように頷いてみせる。

 男の横に座るルニアはまだ状況が飲み込めておらず、記事に記載された写真を食い入るように覗き込んでいる。

「本日は、モルガナから言伝を預かってきまシタ。是非、ご主人様にこの問題を解決して欲しいとのこと」

「ご主人様、問題とは?」

「話の腰をオルな。今、ワタくしがご主人様と話してイルのよ」

 男が思案している間も、この調子である。

 制止しても、しなくてもルニアとバンシーはすぐに火花を散らすような言い合いに発展する。

 些か、このやり取りにも飽きてくる頃だ。

 男は何も言わず、隣に座るルニアの唇に人差し指を置いた。

 ルニアはビクッと肩を震わせて男を一瞥する。

 男は片目をつぶり、唇だけを動かす。

 途端に、ルニアは借りて来た猫のように大人しくなった。少々顔が赤くも見える。

 バンシーは端から見れば、仲睦まじいやり取りに大きくため息をつく。

「ご主人様はどう考えマスか?」

 記事に記載された写真には一人の人物が写っている。

 周囲が暗がりなため、顔を判別することはできないが、警察が行方を追っている修道女で間違いないだろう。

「この記事を書いた記者は危険を察知シタのか、モルガナの店でお守りを買っています。店で売られてイルものは、気休め程度デスが、魔除けにはなりマス」

「だが、記者は死んだ。そういうことなのだな」

 男がバンシーに告げると、何か言いたげなルニアは口をパクパクと開閉させている。

 律儀にも、約束を守っているようだ。

 バンシーは挙動不審なルニアの行動を尻目に首肯した。

「その通りデス。ご主人様。記者は記事を世に出す前に消さレタ。ワタくしはそう考えていマス」

「記者の死体は見つかったのか?」

「身元不明で川岸に打ち上げられていたようデス。死の匂いを嗅ぎ取り、近付くと腕にアザが浮かび上がってまシタ。それは店で買ったお守りが役目を果たシタ証デス」

「そんな! 死体に無用に近付いたら疑われちゃう! あっ」

 黙っていられなかったのか、我慢の限界だったのか。

 ルニアは椅子から勢いよく立ち上がって叫んだ。叫んだあと、座っていた時よりも縮こまっている。

「アタくしがそんなヘマするわけないデシょう。ニンゲンにはワタくしの姿は見えません。ご主人様や、その従者。魔術に携わるモノは別デスが」

「バンシーのことだ。それだけではないのだろう?」

 バンシーは褒められたことに気を良くしたのか、自信ありげに「当然デス!」と胸を張って答えたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る