6ー3

 遠くの方から、ランプを手にしてすすり泣く少女がまっすぐに向かって来る。

 周囲にいたはずの人も、道を往来していた馬車も立ち止まり、少女に道を譲っていた。ただ事ではない。

 また、エリザベスの襲撃かと身構えたが、横にいるご主人様は懐かしむようにその少女を見つめていた。

 すすり泣く少女は緑色の波打つ髪をしていた。髪は地面を引きずるように長い。

 そしてそれと同じくらい着ていたローブのような服も苔が生えたようなモスグリーンだった。

 少女は暫く、ご主人様とルニアの前で泣いていたが、ピタリと泣き止んで顔をあげる。

 少女はとても美しい顔立ちをしていた。

 ルニアはその美しさに引き寄せられため息を漏らした。

 だが少女の眼は異常なほど赤く、耳も少し尖っている。どう見ても人間の類ではない。警戒して動けないルニアをよそに、

「久しいな。元気にしていたか?」

 そう言うや否や、人との対話に不慣れな筈のご主人様は、赤い目をした少女を引き寄せて熱い抱擁を交わす。

 ルニアは声なき声をあげながら、無理矢理にその間に割って入った。

 ルニアの邪魔に少しムッとしたような表情を見せたが、少女は服の裾を軽く摘み会釈した。

「ご主人様、お久しゅうございます。ご主人様が今でもワタくしを覚えていてくださり嬉しゅうございます」

 鳥がさえずるような綺麗な声だった。詩でも歌っているような澄み渡る調べだった。

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