6ー2

 ルニアは澄ました顔で口についたクリームを拭き取る。

 ご主人様をちらりと見る。

 コーヒーを飲みながらいつものように新聞に目を通している。

 時折、こちらを窺うような視線を感じるが、目が合いそうになると途端に視線は新聞へと固定される。

『ああ、私は。自分の大切なご主人様にまでいらぬ心配をかけてしまった』

 反省しなければならない。

 いつまでも引きずって後悔しても好転することはなく悪化するのみだ。

 また視線を感じたルニアは外れる前に、満面の笑みをご主人様へと向ける。

 ご主人様は少し間を置いて、勿体ぶったように言った。

「美味しかったか?」

 ルニアは大きく頷いた。それが淑女ではない振る舞いでも、ご主人様を安心させたかった。

 それを見てご主人様は満足げに頷いた。



 ご主人様が最後のおかわりを飲み干して、席を立とうとする。

 ルニアは新聞のある小さな記事が目に留まる。

『教会にて、聖遺物が消失。行方が分からなくなっている修道女に事情を聞くべく、捜査が続いている』

 その時、遠くの方で泣き声が聞こえた。

 それはあまりにも悲痛で物悲しさを訴えている。

 今まで快晴な空が淀み、霧が立ち込めてきた。シクシクとすすり泣く声はだんだんと近付いて来るようだった。

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