七色の能力者(後)
◇
うんともすんとも言えなくなった。本当に心理戦がうまい。闘争心がすり減っていった。
女が再度両手を上げると、今度は左右のまぶたまで閉じた。
「もう
思いがけない展開となり、あっ気に取られた。相手が白旗をあげたのに、安心するどころか、頭が混乱するばかり。完全に手のひらの上でおどらされている。
「これだけじゃ信用できない? だったらこうしましょ」
おもむろに両ひざをついた女が、屋根の上でうつ
たくらみがあるとしか思えず、とても近づく気になれない。かといって、降参した相手に攻撃を加えるわけにもいかない。いくら何でも
「両目をふさがせてもらう。あと、手もしばらせてもらうぞ」
「かまわないわ。能力のことを洗いざらい話すから、やさしくしてね」
瞬間移動や遠隔操作のことを考慮すれば、視覚を
手のほうはどうするか。
ただ、両手が自由のままだと、何のために目隠しをしたのかわからない。頭が回らない。とりあえず、
「
聞いてもいないのに、女は
「自身が移動できる限界距離は三百メートル。障害物があってはいけないし、その地点を約一分間も見つめる必要があるから、
油断して聞き入った。五十メートルで十秒だから、普通に走る速度と変わらないか。
「どうしてそんなにペラペラとしゃべるんだ?」
「言ったでしょ、服従の証だって。それに、
「……自分の能力じゃない?」
「あなたも知っているトランスポーターからの借り物よ」
本当に聞きたかったのはそこじゃないけど、能力を借りられるのか。それがこの女の能力だろうか。
「サービスしてもっと話してあげる。さっき言った、取っておきの能力の話なんだけど、名前は
人狼王……。
「どんな能力かというとね、ある地点を登録すれば、そこからの眺めにどこからでもアクセスできるようになるの。それがどれほど素敵なことかわかる? まぶたを閉じれば、いつもお花畑が広がっていたりするのよ」
「最後に一つアドバイス。あなたは自分の能力について、よく知ったほうがいいわ。そうしないと、また二十年前のようにしくじっちゃうわよ」
「……さっきから何の話をしてるんだ。最後ってどういうことだ!?」
「じゃあ、三百メートル先で会いましょ」
その直後、女の姿が消えた。すぐには状況を理解できなかった。冷静になってから、目玉が飛び出るの意味と、女が
◇
結局、女は発見できずじまい。タイムリミットがせまったので、スージーに『
一夜が明けると、朝からパトリックは出かけていた。デリック・ソーンの件で
帰りを待っていると、何とヒューゴが屋敷へ現れた。昨晩は、僕らが屋根の上で戦っているとは夢にも思わず、
「あの野郎が〈侵入者〉について
〈侵入者〉の情報と引きかえに、しばらくデリック・ソーンを
ほどなく、パトリックも屋敷へ帰ってきた。相手が居間へ入ってくるなり、ヒューゴは窓の外へ視線を向け、かたくなに顔を合わせようとしない。
「まずは、昨晩遭遇した能力者について、くわしくお願いします」
空に飛ばされたこと、ナイフの遠隔操作、瞬間移動、怪力、あと、自分には見えていたけど姿を消せること、七つの能力を持っていると言ったこともふくめ、残らず話した。
「空に飛ばされたのなら、どうしてお前はここにいるんだ?」
ヒューゴにツッコまれた。うっかりしていた。
「ウォルターは空を飛べる能力を持っているんです」
「お前と同じわけか。まあ、普通の人間じゃないとは思っていたけどな」
パトリックが
「本当に女でしたか?」
「はい。見た目も声も雰囲気も」
「確かに女だったぞ。俺も声だけならハッキリと聞いたからな」
「能力の一つは、私が知っているトランスポーターのものと
「あっ、トランスポーターから能力を借りたと言っていましたよ」
「……能力を借りたんですか?」
「はい。女が自分でそう言っていました」
実際、この目で見たわけだから、その話を信用している。たった一つの能力に、あれほど
「トランスポーターってのはどんなやつなんだ?」
「男です。年齢的には私やウォルターと変わらないそうです」
パトリックが首をかしげながら、しばらく考え込んだ。
「問題はその女がどういった目的でここへ来たのかと、大量のマスケット銃を誰が使う予定で用意したかですね」
パトリックがなぜそんなことに疑問をいだいたのか、理解できなかった。
「〈侵入者〉が使うためじゃないんですか?」
「連中は基本的に単独行動だろ」
「まだウォルターには話していませんでしたね。いい機会ですから、〈侵入者〉の話をしましょう」
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