第13話

(もちろん、決まっているでしょ)

百妃は、なぜか電話の向こうで亜川司令が笑っているように思えた。

(仕事を頼みたいの)

「まだわたし、ミッション遂行中なんじゃあないの。デブリーフィングが終わってはじめてミッション完了のはず」

(まあ、今のミッションへのオプション追加とでも思ったらいい)

百妃は、ため息をつく。

「簡単な、仕事なんでしょうね」

(もちろん)

百妃は、嫌な予感にとらわれ眉をひそめる。

(つれて帰ってほしいの、基地まで)

「誰を」

少し、間が開く。

百妃の表情が、さらにくもる。

(マキーナ・トロープをつれて帰って)

百妃は、受話器を耳から外した。

「ティーガー、電話が混線してるんじゃない?」

ティーガーは、首をふる。

「大丈夫だ。なんの問題もない」

百妃は、ため息をつく。

「えっと、切るね」

(待ちなさい、ポイントを倍にしてもいいよ)

「安易に報酬をつりあげるのは、リスクがある証拠だから気をつけなさいっておばあちゃんが」

(あなたが欲しがってた、同田貫もつけてあげようか)

百妃は、もう一度ため息をつく。

「とりあえず、話を聞こうかな」

(亡命を希望している、マキーナ・トロープがいるのよ)

百妃は、あたまがくらくらする。

「マキーナ・トロープって、ひととしてはもう死んでいて、体内に注入されたナノマシンに操られているだけの存在だって言ってたじゃん。意思のないゾンビみたいなマキーナ・トロープが、亡命なんてありえないでしょ」

亜川司令は、ゆっくり丁寧に話をする。

(あなたと同じ17歳のおんなの子が、体内にナノマシンを注入されてマキーナ・トロープとなった。けれど、注入されたあとに呪が起動され、パウリ・エフェクトによってナノマシンは脳の支配を完遂できなくなったということなのよ)

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