第14話

百妃は、眉をしかめる。

そんなことが、ありうるのだろうか。

マキーナ・トロープは、元々RBが対呪術者用につくりあげたゾンビ兵士だと聞いている。

彼らはあたかもひとのようにふるまうが、それは生前の人格が反響しているだけで、単なるエコーのようなものらしい。

マキーナ・トロープのほとんどは、おとこである。

おんなは大なり小なり呪を持っているから、パウリ・エフェクトによってナノマシンの正常動作を阻害するそうだ。

だから、おんなにナノマシンを注入しても、大半は死んでしまう。

おとこは、呪を持っていることが稀であるため、ナノマシンに対して抵抗することができない。

だから、容易にゾンビ兵士化してしまう。

単にナノマシンを注入され死ぬだけではなく、生き延びて自分の意志も保持しているとなると、ナノマシンをコントロールしているということになる。

理論的には、パウリ・エフェクトによってそうすることもできると聞いたことはあった。

とはいえ、あくまでも理論上の話であり、現実にそんなことがおきるというのは信じがたい。

けれどもし本当にそうなのであれば、とても痛ましいことのように思う。

自分と同い年の少女たちが、ひとではない存在につくり変えられてしまい、それでも生き延びようとしている。

当人たちにとっては耐えがく残酷な状況だと、いえるだろう。

救いたい、とは思う。

色々な可能性、RBのしかけた手の込んだ罠である可能性も考えられるが、まずその少女たちに会い、可能であれば助けたいと思った。

「判った、その仕事引き受けるから」

(ありがとう、百妃。では、いそぐ必要がある)

百妃は、頷く。

「RBのマキーナ・トロープも、その子たちを追っているということね」

(そう。それなんだけれど、ちょっとやっかいなマキーナ・トロープが動いているっていう情報があって確認中なのよね)

百妃は、首を傾げた。

「やっかいですって?」

(かつて百鬼と、呼ばれたおとこ。あなたの父親であった、おとこね)

百妃は、げっとなる。

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