第50話

「そ。なら受けてくれるってことでいいかな?………そこの無口ちゃんはどうかな?」

「………結構です。部活で忙しいので」

「おや、残念。ま、しょうがないか。

じゃあ、この仕事はクールビューティーと茜君が担当してくれるということで」

「………何で俺もそこに入ってるんですか」

「当然、君は強制だ」

「俺、タダ働きはしない主義なんですけど。

ていうか、この間のアレは今ここで使ってもいいっすか?」

「今このタイミングで使うなんてそんな頭の悪いことを君はしないと、私は踏んでいるけど?」

「過大評価ですよ。俺は馬鹿なんで、そういうのは判じかねます」

「物の道理が分からないことは馬鹿とは言わ

ない。 愚か、と言うんだよ。

勘違いしてるかもしれないけど、私は君を馬

鹿だとは思ってないよ。愚かで浅薄せんぱくだけど頭が悪いとは思っちゃいない」

「……………」

「そう、そういうとこ。言い返すのは意味がないと理解しているから黙ってる。そういう所が頭が良くて、愚かだと言っているんだ」

「会長、少し言葉が過ぎると思いますが」

「何がかな?君には関係のないことだろう。

それともこの男に対して、何か思うところでもあるのかい?」

「い、いえ、そういうわけでは無いですが………」

「なら、黙っていてくれたまえ」

「で、ですが……」

「もういい、紅。これは俺の問題だ。庇ってもらって悪いが、口出ししないでくれ」

悪いな、紅。まさか庇ってくれるとは思ってなかったが、だけど、それでもこれは俺が対処しなければいけないことだ。誰かの手を借りて解決するのは不誠実であり不適当だ。

俺の問題は俺が解を出さないければ何の意味も持たない。

「先輩として一つ話をしてあげよう。

正しいだけでは正しさたりえないということ。最適解さえ求めればいいという、そんな単純な話で世界は動いていない。

君は中途半端に頭が良いばかりに、最適解ばかりに目がいきがちなようだけど、きちんと『不適』にも目を向けるべきだ。この世の発明は大体が失敗から生まれるように、最適を辿るだけでは解決策は見出せないということだ」

「最適解だけでは答えが出せない………」

「そう。そこが計算だけではこの世の中を生きていけない所以ゆえんではあるんだろうね。数学のように常に最適解が正しいわけではなく、科学のように化学反応が目に見えてわかるわけではないのがこの世界だ。……まぁ、実際難儀なものだ。正しさが間違いであり、間違いが正しさであることという絶対的な矛盾が発生し、しかもそれがまかり通っている。要するに老人に席を譲ることが悪であり、殺人を犯すことが善になり得るケースが残念ながら存在してしまうということだ。日本に限らず世界中探してみてもはっきりとした善悪の基準が定められていない。法律や憲法なんてものは絶対じゃないってことはすでに気づいているはずだよね?ここまでがセーフでここからアウト、って線引きされていないのが現状だ。

そして、その善悪のライン、ルールを個人の中でこしらえてしまったのが間違いだったんだ。それは躾や教育の賜物だ。悪い、と一概に言えないし切り捨てることもできない。かくいう私もその躾や教育で育てられたからね。勿論君も、だろ?

…………いや、もしかしたらこの間違いこそが正解だったのかもね?まぁ、それはおいとくとして。 個々人が決めてしまった善悪の基準、人はそれを道徳心又は倫理観と呼ぶ。

人によっちゃ、『万引きはセーフだけど、殺人はアウト』という価値観を持つ人もいれば、『窃盗も殺人もセーフ』だと言う人もいる。一人一人が違ったルールの中に放り込まれている。大富豪で例えると2が最強だとい言い張る人もいれば3が最強だというルールも主張する人もいるということだ。この世界のルールを一人一人が曲解したままゲームを続行するようなものだ。…………そんなゲーム成立しないだろう?そういうことだ。だから、犯罪や差別が生まれてしまうんだろうね。

まぁ若干、遠回りしてしまったが、私が言いたいことは、頭が良いなら全てを見通せるほどまでに達しろ。でなければ意味を成さない。間違いも正解も全て見透かし、その上で見極められるほどじゃなきゃ足りない。

……まぁ、そんなものは理想論に過ぎないけどね。そんな境地に達せる人間なんていない。仮に辿り着けたとしても、それはもう人じゃない。化け物とかそういう類だろう。

もしくは………人知を超える力を持っている、


超能力者とか」

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