第49話

「ふーん。………藍は?」

「………茜が来るって聞いたから」

「ん?俺が来ると良いことでもあんのか?

いつからラッキーアイテムみたいな扱いになったんだ」

「…………そういうことじゃ、ないんだけど」

「ん?ま、いいか。それよりーーールカ」

「なに?」

「肉料理と魚料理どっち食う?」

「お肉ー」

「了解」

ルカとの会話も手慣れてきた今日この頃。

お互い遠慮がなくなってきたのか、会話も気楽になった。

各々が注文を終え、料理が運ばれるのを待っている間、会長と女子二人が軽い雑談を始めた。

「二人は、もう学校になれたのかい?」

「はい。毎日、充実した生活を送っています」

「それは良かった。………無口ちゃん、君はどうだい?」

無口ちゃん………どうやら藍のことらしい。

ぴったりといえばぴったりだが、後輩にそのあだ名はどうなのだろうか。

「…………楽しいです」

その言葉には楽しさが一ミリも含まれてなさそうだった。

「そういえば、無口ちゃんは副会長の妹さんらしいじゃないか」

「………はい」

「副会長から君のことをいつも聞いているよ。なんでも、バスケ部では大型ルーキーとして期待されているらしいじゃないか。この時期にして既にベンチ入りしているとか」

「………はい」

「いや〜凄いなー、よく出来た姉妹じゃあないか。ほとほと感服するよ。

………それで、クールビューティの方は何か私に話があるんじゃないのかい?」

クールビューティ、恐らく紅のことだろうが

言い得て妙というかハマってるというか取り敢えず印象通りのあだ名だった。

「っ! はい。………なぜ分かったのですか?」

「これでも生徒会長だからね〜、生徒の心情くらいパッと見で何となく分かるさ」

「そうですか……、では……」

落ち着こうとしているのか、一度深呼吸をしている。

「私を生徒会に入れていただけないでしょうか?」

度々話題に上げていた生徒会関連の事柄。

なぜそれ程までに執着するのか判然としないが、一ヶ月同じクラスで生活を送り想いの強さは理解した。

紅の切実な願いが伝わっているのか定かではないが、会長は大人びた微笑を浮かべた。

「無理」

デスヨネー。

この会長がそんなに甘くないことは分かっていたが、分かっていても他の言い方に換言出来たのではないかと思わざるを得ない。

無理、と突き放したような言葉の真意は果たしてどこにあるのか。

「理由を伺ってもよろしいでしょうか?」

突き放されてもなお食い下がろうとする紅には悪いが、多分真実を口に出さないだろうことは容易に想像できた。はぐらかし、仄めかし、謎めく人間に質問など無意味なのだから。どうせ、差し障りのない取って付けたような理由でも話すのだろう。

「理由、と言っても……君ならこの生徒会のシステムについて心得ているだろうけど、

役職に務める為には、現職の生徒に指名されなくてはいけないんだよ。

会長になりたかったら私から、副会長になりたかったら……そこの無口ちゃんのお姉さんから指名されなくてはいけない」

「承知してます」

「だろうね。なら後は分かるよね?」

「………はい。お手数おかけして申し訳ありませんでした」

不承不承といった感じで引き下がったが、それもあくまで形だけだろう。

「いやいや、気にしなくていい。後輩の相談に乗るのは先輩の務めだ」

ついでに、と続けた。

「一つだけアドバイスを授けてあげよう。

………毎年、役職に就いている三年生は九月までに後釜というか、後任を指名しなくちゃいけないんだけど、その指名する生徒の基準は行事の活躍を見て決める人が多い。

まあ今回みたいに生徒会に加入する権利を与えるっていうのは特例というか、特別措置みたいなものだから。

………その権利を獲得した男は加入する気ゼロみたいだけどね」

そう言い、会長は俺を睥睨した。

「いいじゃないすか。あくまで権利であって義務ではないでしょ?」

「まあね、そこに強制力はないよ。

………とりあえず、行事で成果を挙げな、と言いたいとこだったけど………」

一度区切りをつけて。

「仕事を手伝ってくれたら、生徒会に入れることも吝かではないよ」

「本当ですか?」

「もちろん。と言っても、あくまで私が働きかけをするだけで、確定ではないからね」

「それで十分です」

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