第47話

閉会式も終わり、帰路に着いた。

半日眠っていただけだが、異様な疲れと脱力感に襲われた。

二、三分程度の道でも徒労感を覚えるくらいには疲れていた。

解けた靴紐を踏み、何度も転けそうになりながらも何とか部屋に着いた、その時だった。

一本の電話が入った。

本来なら電話に出ず、居留守を使うことが殆どなのだが、疲労感のせいか、まともな判断ができず相手を確認せずに脊髄反射で電話に出てしまった。

「……もしもし」

『やあ、元気してる?』

即切った。

何で、メールアドレスならまだしも電話番号まで知られてんの?

一度もあの人の前で携帯を出した覚えがないんですけど。

もう一度、着信が入った。

『おいおい、切るなんて酷いじゃないか』

「………すいません、つい反射で」

『会長様にそんな態度をとって良いのかな?』

「今回は大丈夫だと思ってます。逃げ切りましたからね」

『ああ、そうだった、そうだったね。

まぁその件で電話をかけたんだけど』

「そうですか。んで、要件は?」

「電話じゃなんだから、ちょっと来てもらえないかい?」

「無理です。もう疲れました」

『よく言うよ、部屋の中で寝ていたくせに。

…………………良い夢も見れたようだしね』

「……………」

『おーい、電話で黙るなよー』

「…………………場所は?」

『えっとー、取り敢えずショッピングエリアにあるレストランに来てくれればいいよ』

「分かりました………、あ、ちょっともう一人だけ人増やして良いですか?」

『ん?君に一緒に来てくれるような友達なんていたの?』

「あたかも俺に友達がいることが心外みたいに言いますね………。

友達……というには少し違いますけど、まぁそういう解釈でいいです」

『ふーん、あっそ。ま、ここに来るまでに周囲の人に誤解されないように気を付けな。

警察を呼ばれたら面倒くさいから』

「?、はい」

『それじゃあ、また後ほど』

「はい、それじゃ」

久々の長電話を終え、携帯を乱雑にポケットに突っ込んだ。

そして部屋に入り、シャワーを浴びた後、

ルカに状況を話しルカを連れ約束の場所へ向かった。

「あーくん、今からどこ行くの?」

「ああ、外食しようと思ってな」

「へー」

然程興味がないのか反応が適当な気がする。

五分ほど歩き、指定されていたレストランに着いた。

「ここか」

「おや、思っていたよりも早かったね」

店先には俺を呼び出した張本人、会長がいた。

「何事も迅速に、をモットーにしてますので」

「白々しいね」

「潔白だからですよ」

「成る程。……仕事も早けりゃ、手も早いというわけだ」

「手が早い?何のことですか?」

「それは店に這入ってのお楽しみということで」

いつも通りの軽口を叩くノルマを達成した所で店先で話すのもなんなので、店内へと這入る。

事前に予約していたのか、奥の個室に通された。店内は落ち着いた雰囲気で、周りを見る限りパスタやピザといったイタリアン系の料理専門だろうか。

時間も時間なので、学生で賑わっていたが個室を予約していたのは流石と言わざるを得ない。

俺の右手を握っているルカも物珍しそうに店内を見回している。

「こっちだよ」

会長に先導される形で店内を進む。

「つーか、食事するだけなら予約する必要無いんじゃないんですか?」

「こんな人目が付くところで私と食事したいのかい?」

「俺は別に構いませんけど」

「おや、意外だ。私と食事するのが嫌だとと思っていたんだが………。でも、私が構うから駄目だ」

「ワガママっすね」

「そうでもないさ。人間なんてこんなものだよ。自分の要求しか通そうとしない。それに一対一なら構わないかもしれないがそこの幼女が居るなら、個室の方が都合が良いだろう?」

そう言い、ルカの方をちらりと見る。

「………まあ、そうっすね。通報されても困りますし」

「はは、面白いけど、君にとっては笑えなさそうだね」

「ええ、本当に、………笑えない」

「私は笑うけどね」

「あなたは、まぁ、そうでしょうね」

この人、俺が死にかけていても助けずに腹を抱えて笑っていそうだ。腹抱えて笑う姿が全く想像できないが。

その一言で会話を打ち切り、個室のドアを開けた。

室内は十人は余裕で入れそうなスペースを有していた。

テーブルにはディナープレートや各種フォークとナイフ、グラスが置かれていた。

流石にグラスは一個しか置かれていないが、そこは学生が利用する店ならではと言うことか。

そして、それ以上に気になる存在が椅子に腰掛けていた。

「あら、遅かったわね。待ちくたびれたわ」

「………なんで、いるんだ?紅……、それに藍まで」

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