第29話
「はあ?一緒に住め?何言ってんですか」
ルカと共に職員室に行き、話を聞くことになったのだが、その教師の発言に怒りを通り越して呆れを覚えた。
「そのままの意味だ。こちらも手は尽くしたんだけどなあ。用意した部屋には入ってもらえず、やむなくマスターキーをその子を渡して好きな部屋に行くように言ったんだ」
この子はやや特殊だからな、と。
「いやいやいや、言ってる意味が全く分かりません。プライバシーの権利ってものがないんですか」
一緒に住む、ということは食事や睡眠も
同じ空間でしなければいけない。
俺の方は理性が保てれば問題ないのだが、
果たしてルカはどうだろうか?
幸い、料理等の家事スキルは人並みには
あるつもりだしこの生活になってからというもの、自炊するようにしていたので腕は上がっていると思う。
ただ、今まで誰かと一緒に生活していた経験など家族、母親以外無い。
だから、どう接していいか分からない。
「それに関しては申し訳なく思っているが、
その分ポイントを増やしてやるから勘弁してくれ」
そう言い、深々と頭を下げた。
その声には反省が滲み出ていてこれ以上責められなくなった。
強面で有名な先生だが、ここまで言われたらこちらも折れるしかあるまい。
「はあ、分かりました。 取り敢えず一度帰ります」
俺のその発言に先生は釈然としない表情を見せたが俺は気にせずその場から立ち去った。
学校を出て自分の部屋に戻る途中、電話を掛けた。
「あー、もしもし」
『もしもし?どちら様?』
数回のコール音の後に出たのは最近聞き慣れた声だった。
とは言ってもクラスで軽く会話する程度だが。
「お前の携帯には相手の名前が表示されてないのかよ」
「ああ、あなたね。知らない名前だったから
つい出るのが遅くなったわ」
「……お前は名前も知らない奴とクラスで話してるのかよ」
俺じゃなかったらその言葉を聞いて泣いてるぞ。
「冗談よ、それで何の用?」
電話越しで表情は窺い知れないが、きっと
嗜虐的な笑みを浮かべているのだろうと、
容易に想像出来た。
まあ、ようやく話の本筋に入ることが出来そうだ。
一度深呼吸をして、話を切り出した。
「………頼みがある」
「それで、どういう事なの?」
電話で軽く要件を話し俺の部屋まで来てもらった。端的だが分かるように説明したつもりだったんだが……。
合流した時には既に表情に軽蔑や困惑といった感情が表れていた。
この時期の夕方にしては肌寒く感じ、思わず身震いした。もう日が落ちてきたからかな?
俺の後ろに隠れているルカを見て、俺に軽蔑の視線を向けた。
「可愛い少女を誘拐してきて、一緒に生活するってとこまでは教えてもらったけれど。
それがどうしたの?」
「おい、その言い方は語弊があるぞ。
ていうか、語弊どころか全然合ってないし。
一度も、誘拐したなんて言ってないよね?」
必死の弁護も伝わらず、軽蔑の視線は今尚向けられたままで、未だ俺の評価は最底辺のロリコン屑野郎だった。
「別に他の人でも良いでしょう?
なぜ私なの?」
「……聞かなくても分かることを聞くなよ」
つい沈鬱な声が出てしまった。
ただ、その理由はといえば明白だ。
今、現時点で俺の携帯に番号が登録されてるのは三人。
藍と先輩と今、目の前にいる奴だけだ。
その中でも一番まともな人物を選んだに過ぎない。
藍は、まあ偏見かもしれないが年下の世話が出来るように思えない。
先輩はコミュニケーション能力は高いし
面倒を見ることが出来るかもしれないが、
そもそも寮が、学年で個別になっているので
一年の寮に二年生がいるのも不自然だ。
よって、消去法で、同じクラスの紅珊瑚が、
選ばれたという次第だ。
ちなみに電話番号の交換は向こうから、
切り出された。聞かれた瞬間は、
やっベー!美少女に連絡先聞かれた!
ヤッフーー!、とまで思い、
人生が薔薇色に見えたが
あなたは使えそうだから、という色気もくそも無い理由を聞いた瞬間、すぐさま灰色に戻った。
ま、まあ、分かってたよ?俺が好意を持たれてないことぐらいは。
……あ〜あ、思い出したくないことを思い出してしまった。
ただ、こいつ。俺以外と喋ってる所見た事
無いんだよな。ボッチなのかしらん?
俺は心の、忘れたいボックスに放り込んで
厳重に蓋をした。そうしないと生きていけない。恥ずかしくて。
閑話休題。
「頼む、お前しかいないんだ」
俺は誠意を込めて頭を下げた。
本人の前で、消去法で選びました、なんて言えるわけがない。
「ま、まあ、そこまで言うならしょうがないわね。面倒くらい見ててあげるわよ」
なぜか顔が紅潮していた。紅だけに。
なんて、指摘したら俺の顔が青ざめることになりそうだからやめた。
「すまん、助かる」
その言葉に頭を下げたまま答えた。
「それじゃあ、よろしくな。
部屋の中…といっても何も無いけど
基本、何でも使っていいから。
一時間後くらいには帰って来れると思う」
「はあ、分かったわよ」
溜息を吐きながらも、承諾をしてくれた。
俺は背中に張り付いているルカを頭を撫でた。
「ルカ、このお姉ちゃんと一緒に留守番頼むな」
「………ルカも一緒に行く」
首を振り、俺のワイシャツを掴んで離れようとしなかった。
う〜ん、どうしたものか。
紳士[ロリコン]である俺は少女の悲しむ顔が見たくないのだがこれから話すことは、
ルカが居ると憚られてしまう。
俺は助けを求めようとアイコンタクトをしたが一度確実に目が合ったのに露骨に逸らされた。
………俺がどうにかしろってことですか、そうですか。
こいつ、はなっから手伝う気ないだろ!
何しに来たんだよ!って俺が言える立場じゃないですね。
少女……って、10歳は少女なのか?
幼女とか少女とか童女とか区別が付かないんだよな。年齢で区別されてんだろうか。
あとでウィキペディアで調べとこう。
「……じゃあ、帰ってきたら何でも好きなことしてやるから、待っててくれるか?」
「……本当?」
「ああ、本当だ。今まで俺は約束は破ったことがないんだからな」
自信満々に胸を張っていると、俺に訝しげな視線が送られた。
…いいじゃんかよ、優しい嘘をついたって。
確かに俺は人との約束は守らない方だ。
そもそも人と約束を交わさない。他人なんてアテにならんし、信じちゃいない。だから、
俺は誰かと約束を交わすなんて滅多に無い。
今回が例外なだけだ。
俺の嘘発言のお陰か、渋々といった感じで
了承してもらえた。
なんか、騙したみたいで罪悪感ぱないんだけど。この罪滅ぼしは帰ってからにしよう。
「んじゃ、今度こそ頼むな」
「はいはい、分かりましたよ」
やや呆れ気味に溜息をついた。
「じゃあ、行ってくるな。ルカ、紅」
俺は部屋に出る際、ルカの頭を一撫でした。
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