第26話
「少し、お話いいですか?」
現在時刻は午後四時半頃。
バスケ部の練習試合が終わり、片付けもひと段落した所を見計らって声をかけた。
「えっと、君は午前中に居た人だよね。
何の用?」
「すいません、ここでは……
場所を移してもしてもいいですか。
短く済ませますから」
了解を得て、すっかり人が居なくなったグラウンドから外れた所へ移動した。
周りには木が鬱蒼としていて、人目につきにくい。話をするにはうってつけの場所だ。
「わざわざすいません。こんな所まで」
これから話す内容も含め、最初に謝ることにした。今までを壊すことをするのだから。
「気にしなくていいよ。
それより、まず名乗ってもらえる?」
そりゃそうだ。初対面の人間にいきなり呼ばれたい訳だ。身元を証明されないと、不安になるのも当然だ。
「すいません、最初に名乗るべきでした。
一年の千草です」
「私は二年生の桃染紅葉、って呼び出すくら
いだから私の名前は知ってるか」
「ええ。存じ上げてます」
「そう。それで、何の用?」
「心当たりありませんか?
こうして呼び出されることをしたと」
「…………」
「実はある人から依頼されて、人探しをしているんです」
「へえ〜、それで?」
「俺はそのある人っていうのが、貴女だと思ってるんですけど」
「じゃあ、私から質問。
誰から頼まれたの?」
「クライアントの情報を教えるわけには
いきませんね。ただ交換条件なら
吝かではないんですけどね」
紅葉さんは僅かに逡巡したが、すぐに
結論を出した。
「分かった、それで良いよ」
俺の提案に乗った。
そうでなくては話が進まない。
なら俺が質問することは一つだ。
「では俺から質問します」
「能力者ですか?」
バスケ部の動向を見ていた中、違和感というか不自然な点はいくつか見受けられた。
紅葉さんが能力者の最有力候補である事は変わらないが犯人である確証はない。
今まで幾つか材料を集めてきたが、それイコール紅葉さんが能力者であるとはならない。
ならば本人の口から直接聞くしかない。
俺の出したこの条件ならそれが聞けると思った。能力者からすれば、誰が狙っているか知っていれば潰すことは容易いが、まず誰が狙っているか分からなければ、それも出来ない。
「うん、そうだよ」
単刀直入に聞いた質問に、端的に答えた。
「それじゃあ、私から質問するよ。
後輩くん?」
「ええ」
「そのクライアントって誰かな?
私は素直に言ったんだから偽らないでね?」
分かっている。そうでなくては交換条件にならない。なら俺も嘘偽りなく話そう。
俺は一呼吸置いた。
「……生徒会長ですよ」
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