第23話
生徒会長からの依頼を受け、三日後。
俺は体育館に来ていた。なんでも、部活動紹介というか各部活がデモンストレーションを
して勧誘するそうだ。
帰宅部の期待の星である俺からしてみれば
心底どうでも良いが、まあ事情が事情でそういうわけにもいかない。
ふと昨日の生徒会長とのやり取りを思い出した。
「とは言っても名前まではさすがに言えない
かな」
緊迫した場面だっただけに俺は拍子抜けしてしまった。
「いや、名前無しでどう見つけろと」
名前も顔も知らない人間を見つけられるわけがない。かぐや姫以上の無理難題だっての。
「大丈夫、ヒントあげるから」
「そうっすか、さっさと教えてください」
焦らすような対応につい年上相手に苛ついてしまい、態度に出てしまった。
「そんなにレディーを急かすものじゃないよ」
うぜぇ、何なんだこのウザさは。
会長はと言えば俺の気持ちが伝わったのか、顔に出ていたのか、分かったよ、と嘆息をついている。
いや溜息吐きたいのこっちだからね?
「とりあえず君の力も見たいから、いつ現れるかだけ場所だけ言っておこう」
そして今に至る。
その能力者が現れるのがこの部活動勧誘会の
ようだ。
しかし男か女か、年齢も分からない。
況して何部に属するかも不明だ。
まあ新入生という可能性は捨ててもいいだろう。デモンストレーションを行うのは上級生だ。そして会長の口振りからするとデモンストレーション中に何かやるつもりだ。
ただ何部かわからない以上、常に集中して見ている他ない。
入学して一週間ちょいで既に仕事を押し付けられるなんて社畜の適性があるのかよ。
働きたくないでござる!
とは言っても俺にメリットがないわけでもなかった。
この依頼を終えたら一つだけ願いを叶えてるれるそうだ。あくまでも生徒会の権限で通ることだけだけど。全く持ってこの仕事自体を辞退出来るならしたいものだ。
体育館では滞りなく部活動紹介が行われている。見ている限りでは特に不自然な現象は起こってない。
そして次はバスケ部の番だ。
バスケに関しては少し覚えがあった。
中学時代、部活に入ってなかったがバスケは人並み以上に出来ていた。
そこで俺は[バスケ部よりも上手い帰宅部]を
目指して一人で練習していた。
ボッチの帰宅部だから大勢でバスケする機会もなく、家でひたすらシュート練習したものだ。
やべ、今思い出すと恥ずかしいな。
何やってたんだ中学時代の俺。
以上、今日の黒歴史披露会でした。
それよりも今は集中だ。
一挙手一投足、とまでいかなくてもバスケ部の動きは注意して見なくてはいけない。
凝でも出来たらいいんだけどな。
念の練習しなきゃ!
バスケ部員が連携しながらゴールに向かっている。いるんだよなあ〜こういう時にカッコつけた挙句外す奴。
そして他の部員どころか今まで話した事ない
奴等にまで影で笑われるパターン。
心配とも期待ともとれる感情を抱いてるが、
この部活にはそういう奴が居ないっぽい。
しかも素人目から見てもかなり上手い。
ミスも無くレイアップを決めるバスケ部員。
ちっ、つまんねえなと心の中で毒づいてると
ある違和感に襲われた。
一人のバスケ部員がパスミスをした。今まで
ミスが無かった分、その光景は異様に映った。ほんの些細、でも確実に取ることの出来ないパスを出した。
だが、その球はラインを割る事はなくパス先の相手の手中に収まった。
「あ?」
おかしい、明らかにおかしい。
稚拙で突飛な感想だがボールが曲がったとしか思えない。
そんな訳ない、と誰もが笑うだろう。
俺も笑う。そんなバカな、と。
だが会長の話を信じるならそれは真実足りうる。
その日、他の部活には違和感を覚える事が
無かった。
よって能力者はバスケ部の部員という事になる。ただその能力は、なんだ?
考えられるのはボールを曲げる、又はボールが曲がったように見える幻覚を見させる能力。ただ後者はさせる意味が無い。
よって前者となるだろうか。
バスケ部に話を聞くか。
やだなー俺コミ症だし。
バスケ部とかリア充の巣窟じゃねえか。
リア充アレルギーだから、近寄るだけで蕁麻疹になっちゃうかも。
取り敢えずまあ身近なバスケ部に聞くか。
この部活紹介をずっと隣で聞いていた女子バスケ部のホープに。
「なあ、藍」
「ん、なに?」
最近ようやくスムーズに話せるようになってきた。
「バスケ部に何か不思議な話とかあるか?」
「うーん。聞いたことはあるけど、不思議な話って訳でもないかも、ていうか急にどうしたの」
藍も大分会話に慣れたのか態度がフランクになってきたというか、遠慮が無くなった。
「いや、ちょっと気になってな」
「ふーん、まあいいか。
えっとね、二年生の女子マネージャーの事なんだけどあの人がマネージャーになってから
勝率が急に上がったんだって」
「具体的には?」
「今まで勝てなかった高校に勝てるようになったとか、大会で優勝した回数が増えたとか」
部活動の結果如何によってポイントが変わる
この学校にとって部活で勝つと言うのは、
通常の学校以上に意味のある事だろう。
「それで部活内じゃ勝利の女神として持て囃されてるって」
成る程、さながらニケという事だろう。
「悪いな、助かった」
「全然」
気にするな、とばかりに首を振る。
んじゃ、やりますか。
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