第22話

「あなた、昨日生徒会室に行ったの?」

「ああ、それが?」

翌日、俺は紅に話しかけられていた。

いや問い詰められたの方が正しいか。

「別に、そんな話を聞いただけよ」

「なに、生徒会に興味あんの?」

「興味があるわけではないわ」

「あっそ」

俺が生徒会室に行った、という噂が学年に広がっていた。

この学校の生徒会はポイントの事もあり、

一年生から生徒会に入ろうと考える生徒も少なくないそうだ。

そして俺が抜け駆けをしたとか何とかという噂も勝手に広まっていた。

そんなつもり毛頭無いんだけどな。

紅と話し終わった後、後ろの席から猛烈に視線を浴びていたのは気づかないふりをした。



放課後、俺はまた昨日訪れた教室に向かっている。今日は副会長ではなく会長が話があるとか。会長に目をつけられる事はしてないんだけどなぁ。

そして見慣れたとは言っても二度目だが

そのドアをノックした。

「どうぞ」

「失礼します」

「やあ、君が茜君だね」

黒髪眼鏡という如何にも会長をやっていそうな女性が座っている。

昨日の副会長のようにふざけた様子はなく

至って真面目な態度だ。

「はい、話とは何ですか」

「その話をする前に幾つか言わなければいけない事があるんだが…。まずは一つ一つ話していこう」

「…………………」

俺はこの会長の事を何故か信頼出来なかった。 決して初対面の人間を信頼するほど俺は

馬鹿ではない。いや、馬鹿というより甘くはないと自負してる。甘くはなくて冷たいと言うべきか。

ただそれでもこの人間をこれからずっと信頼する事は無いのだと勝手に確信していた。

確定していた。

下手な事を言ってはいけないと警鐘が鳴っている。其れ程にこの人間が分からない。

「そんな警戒しなくても大丈夫だよ。

それに君にとって悪い話ではないんだから」

そう言ってその話が良い話だった事が一度もないんだが。

「君は例の能力者に会ったそうじゃあないか」

例の、というのはアレの事なんだろう。

「ええ、まあ。左腕も治してもらったんで」

「そうかそうか、それは良かったね」

鷹揚に頷いているが、俺にはその意図が全く読めない。何が良いんだか。

「君は珍しいタイプだね。

入学早々に既に遭遇するなんて」

そんな君だから頼るんだけどね、と小声で言ったがその時の俺には聞こえなかったが。

「単刀直入に言うと君に一つ依頼したいんだけど良いかな?」

「お断りします」

「本当に断って良いのかな?」

「何が言いたいんですか」

本当に分からない。たかが一生徒に会長が

わざわざ依頼だなんて。

「おっと、私としたことが。単刀直入すぎたね。ごめんごめん」

「この学校の制度は説明されてるよね?

ポイント制ってやつ」

「はい、それがどう繋がるんですか?」

「本当は言っちゃいけないんだけど、

もう君は関係者だから良いかな」

「?」

「この学校にはまだ何人か能力者がいるんだよ。怪我を治す能力、君はヒーラーと呼んでるようだけどね」

なんでその呼び方を知ってるんだ。

俺の中の警鐘が再び鳴り始めた。

こいつは本当にやばい気がする。

「っ、それがどうしたんですか?」

「どうしたか、がどっちの意味かは聞かないでおくよ。まあ大体分かるけど」

底が見えない。深いのか浅いのか。

俺の持論ではあるが、底が深い人よりも底が見えない人の方が怖い。

底が深いだけならまだやりようはあるが、

底が見えないとどう対応して良いか判断出来ない。自分の策が通じないだけならまだしも自縄自縛になり得る可能性がある。

そこが怖い。底だけに。

まあ一口に深さと言っても深さにも色々あるが。

「この学校にはまだ何人かいるんだよ。

其奴らがまあ色々やらかしている訳だ」

「それを俺がどうにかしろと?」

「まあ、そんなところ」

「イカれてますね、どんな能力を持つか分からない奴をどうにかしろと?」

「そうだよ」

何言ってんだ、この会長は。

何にも持たない俺が能力者に勝てるわけがない。

「さっきも言ったけど、断って良いの?」

そういうことか。何から何まで俺に言ったのもことわらせないため…か。

「断れないってそう言うことですか」

「おや、理解したのかな?」

「本当にイかれてる、滅茶苦茶だ」

「ふーん、まだ完全に理解したというわけでもなさそうだけど…。まあ良いか」

気になる言い方をされたが下手に喋るとさらに探られそうだ。

「それじゃあOKって事かな?」

「俺の出来る限り、ですが。

それで何をすれば良いんですか?」

「そうだね、取り敢えず標的だけ言っておこう」

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