学園
入学
それから私は、王都へと向かった。
勿論、学院に入学するために。
テレイアさんと子どもたちも、後から王都に来るらしい。
元々テレイアさんは王都に住んでいて、どうせなら心機一転したいとのことで。
私としては、入学後もあの子たちに会えるから、嬉しいことだ。
王立魔法学院……国中の魔法の才ある者たちが入学する、そこ。
華美ではないが荘厳な雰囲気が漂うその建物を前にして、私もついにここに入学するのだと思うと、感慨深く感じる。
魔法学院は魔法を取り扱う資格を取得するための場所。
その資格を取得するためには、魔法学院で必要な単位を習得し、かつ、卒業試験に合格すれば良い。
最短で資格を取得するならば必須科目のみ取れば良いが、一応学院ということで、それ以外の一般教養科目も受講することができる。
幾つかの科目以外は、試験に合格さえすれば、講義を受講せずとも単位を取得することもできる。
時間をかけて講義を受けても良いし、そうでなくても良い。そこは、生徒の自由だ。
貴族の子息なんかは、必須科目だけを受けて資格を取得する者も珍しくない。
……領地経営の勉強やら、お付き合いやら、色々あるし。
私は勿論、最短で卒業すべく必要科目だけを選択した。
……早く卒業して、一人前になりたくて。
でも、絶対に「目立たない」ように行動する。
縁が切れたとはいえ、ロルワーヌ伯爵の娘だったのだ。
貴族の子息たちとの面識がある故に、色々しがらみもある。
それに、あまり派手なことをして目立ってしまって、お父様から妨害または囲い込みがあったら最悪だ。
一応学院に入学するに当たって髪は染料で染めた上に後髪を切って、逆に前髪は長めにして顔を覆い隠すようにしているけど。
軽くなった髪を指で弄りながら、私は扉を開けた。
玄関先は、外と同様に華美になり過ぎない程度の装飾がなされている。
柱や天井には幾つかの天の使いをモチーフにした彫刻があり、美しい柄の絨毯の下は徹底的に磨かれていた。
ゆっくりと建物内を見回りつつ、私は受付に行く。
入学の案内と書かれた書類を受け取り、入学式の大きなホールに向かった。
ホール内には、既に多くの生徒が集まっていた。男性が八割、女性が二割……といったところか。
ついでに、貴族が六割平民が四割。
指定された衣服などないので、貴族はすぐに分かる。
私はコソコソと、端の方の席に腰を落ち着けた。
「……おい、あれって……」
やがて、ホール内が騒めく。
一体何で騒いでいるのやら……と思って騒ぎの方を見ると、一人の男がその中心になっていた。
……貴族、ではなさそうだ。
見覚えがないし、衣服もそれらしいものではない。
けれども貴族も平民も変わらず、彼を見ては騒いでいる。
……一体、何故だろう?
首を傾げつつ、じっと彼を見る。
特別な衣服ではないものの、確かに騒がれるほどの整った顔立ち。そして、服の上からでも分かる鍛え上げられた肉体。
……けれども、それだけでは何故、彼が騒がられるのかが分からない。
特に貴族が平民を話題に上がるなど、以ての外だ。
やっぱり理由が分からず、周りの声に耳を傾ける。
「……あいつが、入学試験トップだったのかー」
「ま、そうだろうな。……何でもあいつ、若干七歳で狼型の魔獣の群れを狩ったらしいぞ?」
「狼型!?それって、一応Cランクだろ?その群れを狩ったって……」
「行商にくっついて行って、襲われたんだと。そん時初めて魔力が発言して、それでも倒したからってんだからヤバイよなー」
「ああ、そりゃヤバイな」
「その後、ロンデル様に弟子入りしたんだと」
「ロンデル様!?あの、第七騎士団の団長だろ!平民からの叩き上げで、実力で騎士団の団長地位をもぎ取った人!王宮魔法師並みに魔法が使えて、剣の腕も一級!平民じゃなくて貴族だったら、すぐにでも騎士団総団長にでもなれるって噂の!」
生徒たちの噂話のおかげで、大分理解した。
なるほど、ロンデル様の弟子か……。
それならば皆が騒ぐのは理解できるし、何より入学試験のトップをもぎ取るのも理解ができる。
なるほどな、と納得したところで教師らしき男が壇上に現れた。
やがて周りはそれに気がつき、騒ぎが徐々に沈静化する。
……そうして、入学式が始まった。
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