首謀者
「そうだ」
あっさりと肯定してきた。
僕の内で、怒りとか疑問とか悲しみとか、いろいろな感情が心の奥底から込み上がってきた。
「何で!」
それらの感情に任せて、僕は叫ぶ。
「ワシは、脳科学と催眠術に精通していてね。それらを併用することで多重人格者を生み出すことができるのだよ。もっとも、副作用で別人格者は力加減の分からない、リミッターが外れた力を発揮するように――」
「そうじゃない!」
僕が聞きたかったのはそんなことじゃない。どうやって多重人格にしたのか、ではない。どうして多重人格にしたのか、だ。
「どうして、こんなひどいことをしたんですか、園長先生!」
どうして僕達を多重人格にしたのか、どうして桜子にあんな凶暴な人格を植え付けたのか。園長先生には、その理由を教えてもらわなければならない。
「……生き返らせるためだよ」
少し間を置いて、園長は答えた。
「生き返らせるため……?」
園長の言葉に、僕は耳を疑う。どういうことだ。生き返らせるって、誰を?
「ワシには愛する妻と息子がいた。香織と明といってな。二人はワシの宝だった。だが、二十年ほど前に事故で死んだ」
園長の目から、一筋の液体が垂れる。
「ワシは、どうしても二人に生きてほしかった。明なんてまだ十歳にも満たない、小さな子だった」
僕達は静かに先生の話に耳を傾ける。
「最初は二人の死体に、催眠術を用いて、生き返らせようと試みた。だが、死体は死体だ、脳の機能は完全に停止してしまっている。いくらワシが催眠を施そうが、二人が動くことはなかった」
当たり前だ。そんなことできるはずがない。死んだ人が生き返ったら、世界がひっくり返るほどの大騒ぎになる。
「そこで、ワシは生きている人間に対して、催眠術を行うことにした。孤児院を経営し、身寄りのない子に対して実験を行った。逢原君、紅君、君たちはその実験の被験者第一号と第二号なのだよ」
被験者、一号二号という機械的な呼び方に僕はムッとする。僕達は実験体なんかじゃない。
園長は話を続ける。
「香織と明の人格を植えつけることには成功した。だが、植え付けた人格は、二人の記憶を受け継いでいない、まさに赤子のような状態だった。さらに元の人格が残ったままになってしまい、身体の主導権も元の人格が握ったままだった」
確かに僕とオドオド逢原さん、元の人格者は消えていない。ちゃんと意識を保っている。
「最初は君達を失敗作として破棄しようかと思った。だが、ワシは経過を見守ることにした。もしかしたら、時間とともに何かしらの変化があると思ったからじゃ。そして十年たった今、予想通り君達は人格を入れ替えられるようになっていた。そして、更なる研究のため君達を捕らえることにしたのじゃよ」
「そのために桜子を利用したのか!」
僕は怒鳴り声を上げる。
「小川君は多重人格者になりたがっていたのでな、ついでに夢を叶えてやったのだよ。……少し誤算があって、生まれたのは少々乱暴な人格だがな」
乱暴? 凶暴の間違いだろ。
僕の精神が怒りで満ちていく。血が逆流してどうにかなってしまいそうなくらいだ。よくも僕の大切な友達に変な人格を植え付けたな。
「ふざけないで!」
だが、僕の怒りが沸点に達する前に、桜子は怒りを爆発させる。
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