第11章 首謀者

天ノ原幼稚園

「ここだよ。私が襲われた場所は」 


 案内されたのは、なんてことはないただの住宅地だった。新築のマンション、潰れた託児施設、ずらっと並ぶ一軒家、営業終了した進学塾。なんてことのない、ただの住宅地。 

 でも、僕はこの住宅地に見覚えがあった。


「ここって……」

「(まさか、桜子の家がこの近くだったとはな)」 


 僕とクロちゃんは息を呑む。僕達は知っていた、この場所を、この風景を。 この託児所は、天ノ原幼稚園は、僕とクロちゃんが育った施設だ。この施設は託児だけでなく、身寄りのない子供を預かる施設でもある。両親を失くした幼少期の僕は、ここで育てられた。


「……この場所を、私は知っている。この施設は主人格が育てられた場所」 


 僕が言う前に、逢原さんが言った。


「え、逢原さんもここで育ったの!? でも、僕がここに住んでいた時にはいなかったよ?」 


 僕の記憶には、施設には逢原さんのような子供はいなかったはずだ。間違いない、逢原さん大好きクラブ会長の僕が言うんだ。逢原さんのような可愛い人がいたのなら、その当時から一目惚れになっていたはず。


「……当時、自殺願望があった主人格がすぐに別の施設に移された。おそらく、その後にあなたは施設に入ったと思われる」 


 僕は確認のため、自分の入った時期と逢原さんが出た時期を照らし合わせる。 

 たしかに、逢原さんの言うとおり、僕が施設に入園したのは逢原さんが出ていった後だった。


「(これで、繋がったな)」

「(うん……)」 


 僕は今一度、天ノ原幼稚園を見る。子供の頃見た景色と、人気が無いことを除けば、ほとんど変わっていなかった。


「僕と逢原さんは、この天ノ原幼稚園で育てられた。そして……」

「私が眠らされたのも、この幼稚園の前。偶然じゃないね」 


 桜子の言うとおり、これは偶然にしては出来すぎている。 


 ここは僕にとって懐かしい、思い出の場所ではあるが、今までのことを考えると不気味に見えてくる。少し怖くもある。


「(史郎、入ってみるぞ)」

「(う、うん)」 


 だが、怖がってはいられない。 

 これはチャンスなんだ。クロちゃんの言ったことが本当なのか、否か。本当に僕と表の逢原さんは人工的に多重人格なのか。クロちゃんとクール逢原さんが一体何者なのか。 

 それら全てを知る、チャンスなんだ。

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