第10章 友達

史郎の覚悟

 包丁を握ったニセ桜が僕目掛けて突進してくる。


「(これでも、ダメなのか)」


 僕と逢原さんの説得も虚しい結果に終わった。

 どんなに叫んでも、どんなに声を荒げても桜子が元に戻る気配はなかった。嫉妬と言うものは厄介な感情のようだ。人の心から、そいつは簡単には消えてくれないみたいだ。


「(おい、史郎。やべえぞ! 早く俺に変われ!)」


 だったら、最終手段に出ることにする。多分、ものすごく痛いだろうな。けど、もうこれしなかい。桜子を元に戻すには、これしかない。


「(史郎、まさかお前……!)」


 僕はメガネを、取らなかった。メガネを外さないで、クロちゃんに交代しなかった。


 ゴメン、クロちゃん。痛覚共有しているから、クロちゃんも痛いだろうけど、ちょっと我慢してね。桜子のためなんだ。

 ゴメン、逢原さん。君の事情も知らずに、告白なんかして。そしてありがとう。こんな僕と今まで友達でいてくれて。

 ゴメン、もう一人の逢原さん。学園生活をサポートするって、友達になるって約束したけど、守れそうにない。でもきっと大丈夫。君にはとても頼りになる別人格がいる、その人が君を守ってくれるよ。

 ゴメン、桜子。もう僕にはこれしか思いつかないんだ。


 僕が死ねば、嫉妬の対象がいなくなれば、入れ替え条件が満たされず、桜子は元に戻るはずだ。


「(やめろ、史郎! やめるんだ!)」

「……駄目!」


 僕は両手を広げ、ニセ桜子の攻撃を受ける体勢になる。


「(史郎ぉ! シロぉおおおー!!!)」


 銀に光る刃物が、僕の胸目掛けて突きつけられた。

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