第8章 2対1
2対1
「(ねえ、クロちゃん! 一体どういうことなの。桜子が桜子じゃないって!)」
「あの桜子には、別の人格が憑いている。今はその別人格が肉体の主導権を握っていやがる」
人気の無い所を目指しながら、クロちゃんは僕に桜子の状態を説明する。
「……理由は分からないが、彼女は我々に敵意を向けている」
「とにかく、何とかしてあいつを止めねえと……!」
走っているうちに僕達は公園に着いた。当たり前だけど、誰もいない。静けさに囲まれた、暗い公園。この公園なら、近くに民家もないし、少しくらい騒いでも問題ない。クロちゃん達はここで桜子と対峙するつもりだ。
「あれぇ? 鬼ごっこはもう終わりなのー?」
少し送れて、桜子……いや、桜子の姿をした何者かが公園に着いた。不気味に笑いながら、僕達の方に近づく。
「さて、どうやって桜子を元に戻すか」
「……入れ替わり条件が不明。ならば私の時みたく気絶させるのが望ましい」
「よしヘッドバットだな! 任せろ!」
「(そんな乱暴な……)」
クロちゃんが頭突きの素振りをし始める。
「そんなことを言ってる場合じゃねえぞ、史郎。見てみろ、相手は殺る気満々だぞ」
ニセ桜子は包丁を持って振り回していた。どこに隠し持っていたのだろうか、一本増えている。両手で包丁を握り、俺達を三枚に下ろす気満々のようだ。
「相手がバイオレンスで来るなら、こっちもバイオレンスでいかねえと殺られちまうぞ」
クロちゃんは拳を構える。仕方ない。でもなるべく手加減してね。
「……加勢する」
逢原さんも攻撃態勢に入る。あまり無茶をしないで、逢原さん。
「二人掛りぃ? 良いよぉ、仲良く殺してあげる」
ニセ桜子が眼にも止まらぬ、飛び掛ってきた。あの瞬発力……クロちゃんが言ったとおり、あの桜子は多重人格者らしい。
クロちゃん達はそれに向かい討つ。
相手の斬撃を交わし、時には包丁の側面を殴って軌道をそらし、斬られないようにしていた。
敵もまた紙一重で、二人の攻撃を交わしていた。
彼らの攻防はとても素早いものだった。見ている僕は目がチカチカしてくるし、酔いそう。
二対一にもかかわらず、敵は引けを取らない。いやむしろクロちゃん達の方が押されている感もある。
「こいつ、強ぇ」
「……強敵」
二人の息が上がっていく。
「あれれ、そんな物なのー。つまんないなー」
対して、ニセ桜子はまだまだ余裕の表情だった。
ニセ桜子はクロちゃんに狙いを定める。
素早い斬撃でクロちゃんを翻弄する。クロちゃんの腕に切り傷が増えていく。傷は浅いものだけど、結構痛い。
クロちゃんは後方に跳んで、体勢を整えようとする。
ニセ桜子はそれを追う。
「ちっ、調子に乗るなよ、寄生虫が!!」
クロちゃんは地面を蹴り上げる。彼がいたのは公園の砂場だった。砂がクロちゃんの蹴りにより、ぶわぁっと舞い上がる。
「く、目が!」
偽者が砂が入った目を抑える。
そのチャンスを僕達は見逃さなかった。
逢原さんが敵の後ろに回りこみ、背中から敵を押さえつける。
「……今のうちに!」
「おうっ! 悪いな、桜子! 少しばかり我慢しろよ!」
そう言いながら、クロちゃんは頭突きを食らわす。ゴンっといい音が鳴った。
「がはっ!」
ニセ桜子は逢原さんに抱えられたまま、膝を地面につける。
「おい、桜子! 大丈夫か!?」
クロちゃんが倒れた桜子に話しかける。
「う……ん、史郎……っち」
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