第7章 密談

史郎に気付かれないように

 草木も眠る丑三つ時。誰もが寝静まる午前二時頃。


「(……すぅ、すぅ)」


 もちろん、史郎も眠っていた。メガネを外して。寝息を立てながら、ベッドで横になっていた。

 ぐっすりと眠っている、朝まで起きることはないだろう。


 だが、俺は違った。史郎が寝るまで、寝たふりをして、夜が更けるのを待っていた。


「よし、行くか」


 俺は史郎を起こさないように、静かに出掛けた。

 家を出たのは、不良との喧嘩に行くためではない。それはもうしないと、史郎と約束を交わした。俺がこっそり外出する理由は他にある。


 向かった先は、記憶に新しい、逢原詩織の自宅だった。

 俺は逢原詩織と話をするため、ここに来たんだ。それは、できれば史郎には聞かれたくない話だ。だから勝手に身体を使わないという、あいつとの約束を破ってまで、ここに来たのだ。


 俺はインターフォンを鳴らそうと、指をボタンに付けようとした。


 その時だった。


 ガチャっと。扉が開き、逢原詩織が出てきた。

 オドオドしていない。こいつはクールビューティな逢原詩織の方だ。


「よお」


 軽く挨拶をする。


「こんな時間にお出かけか?」


 俺の質問に、逢原詩織は、


「……話をするため、あなたの家に行くところだった」


 こう答えた。少し驚いた。


「話って、史郎にか?」

「……違う、裏のあなたに」


 こいつの返答に、俺は小さく笑う。


「はは、史郎が聞いたら、羨ましがるだろうな。だが、好都合だ。俺も、お前と話がしたかったんでな」

「……入って」


 逢原に誘導され、俺は家の中に入った。

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