現実世界

「……私は貴方と恋人関係にはなれない」


 一度目と同じ答え、ノーだった。


 僕は上半身を起こし、差し伸べた右手を元に戻した。


「理由を、聞いてもいいかな?」


 涙が零れるのを堪えながら、僕は震える声で彼女に尋ねた。


「……何故なら」

「逢原は俺と付き合ってんだよ!!」

「く、クロちゃん!?」


 理由を答えたのは、どこからか突如現れたクロちゃんだった。

 クロちゃんはその腕で、彼女を抱き寄せる。


「悪いな史郎! 俺達、少し前から付き合ってんだ!」

「……そういうこと」

「あ、そうそう逢原。今日の弁当も美味かったぞ! また明日も頼むな!」

「……あなたのためなら、毎日作る」

「愛してるぜ詩織」

「……私も」

「そ……」


 ラブラブにいちゃつく、二人の姿を見て、僕は……。


「そりゃないだろうぉ――――――――!!」


「(うぉ!? なんだ、なんだ!?)」


 そう叫び、僕は夢から覚めた。


「(ど、どうした史郎!? 火事か!? 地震か!?)」


 頭の中で、クロちゃんが慌てふためく。 僕は乱れた息を整えながら、両手で頬をつねる。

 痛い、とても痛い。これは現実だ。


「はは、痛い。現実だ、目が覚めたんだ……」

「(いてて! なんだよ史郎! 頬っぺたつねるのやめろよ!)」


 クロちゃんの意見を無視して、僕は頬の痛みを感じながら、ここが現実である実感をかみしめた。

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