お弁当を忘れた昼休み

 四限目が終わり、昼休憩。


 僕はあることを思い出した。

 お弁当を作り忘れたのだ。今朝はクロちゃんのことで慌てていたから、用意するのをすっかり忘れていたのだ。


 そのことをクロちゃんに報告する。多分、クロちゃん、怒るだろうな……。食べることが何より好きだもんな。

 でも無いものはしょうがない。僕は正直にクロちゃんに話した。


「ん、そうか。分かった。まあ弁当のことは気にすんな」


 それがクロちゃんの反応だった。なんか予想していたよりも、反応がとっても薄い。もっと駄々っ子のように喚くと思っていたのに。


 そんなクロちゃんは、教室を出てどこかに行ってしまった。購買にパンでも買いに行ったのかな?


 さて、僕はどうしようかな。僕も購買に行って、昼ご飯を買いに行くか。

 ……いいや、食欲が湧かない。夢の中だからかな?

 でも、クラスメイトが食事をしている中で、僕一人が何もしないというのはおかしい。……夢の中で、そんなことを気にするのは変だと思うけど。


 僕は部室で時間を潰すことにした。


 新聞部部室。いつもは放課後だから、昼休憩に行くのは始めてた。


 あ。鍵、開いてるかな。閉まっていたらどうしよう。


 そんなことを考えながら、僕は部室のノブを回した。

 ノブはちゃんと回った。つまり、鍵は開いていた。鍵が開いているということは、中に誰かがいるということだ。


「失礼しまーす」


 そう思い、僕は簡単な挨拶を言いながら、入室した。


 部屋には、桜子と逢原さんがいた。桜子は購買で買ったであろう菓子パンを、逢原さんはお弁当を食べている最中だった。

 なお、この逢原さんはクールの方じゃない、オドオドした主人格の方だ。僕が扉を開けた時、まるで怯えたネコのように、ビクっと身体を動かしたからだ。もし、彼女がクールな逢原さんだったら、きっと僕が入室してきても気にせずに食事を続けていただろう。


「やあやあ、史郎っち。こんな時間に史郎っちが部室に来るなんて珍しいね」


 パンを頬張りながら、桜子が気さくに話しかけてくる。


「なんか教室に居づらくてな。……悪かったな、桜子、逢原さん。朝は変なこと言って」


 僕は二人に、今朝のことを詫びる。


「まあ長い人生、ああいうこともあるよ。気にすることないさね」

「わ、私も気にしてない」


 二人は僕のこと許してくれた。ホッと胸をなでおろす。


 そうだ、クール逢原さんにも謝らないと。


「ねえ、もう一人の逢原さんは?」


 机を挟んでオドオド逢原さんの正面の椅子に座りながら、僕は彼女にクールさんの所在を尋ねる。


「えっと、お姉ちゃんは、別のところで、お昼食べてる……」


 しどろもどろな喋り方で、逢原さんは答えてくれた。こっちの逢原さんは妹なのか。

 別のところ……教室かな?


 逢原さんのことを考えていると、僕の頭の中にある考えが浮かんだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る