同姓同名

 僕とクロちゃんの場合は、史郎とクロ、それぞれ別の名前を所有している。


 でも、逢原さん達の場合はどうだろう? 


 現実世界ではどちらも『逢原詩織』さんという名前だ。でも、双子ならそれぞれ別の名前を保持しているはず。


「ねえ、逢原さん」

「……何?」


 僕が「逢原さん」と呼ぶと、返事したのはクールな方の逢原さんだった。オドオド逢原さんは、クールさんの後ろに隠れている。


「変なこと聞いて悪いんだけど、逢原さんの下の名前って何だっけ?」

「……詩織」


 なるほど、こっちの逢原さんの名前は詩織っと。


「じゃあ、そっちの逢原さんの名前は?」

「……詩織」


 彼女の返答に、僕は驚愕した。


「え、同じ名前なの!?」

「……そう」

「漢字も同じなの!?」

「……そう」


 どういうことだろう。双子で同じ名前なんて、ありえない。


「史郎っち、どうしたの? なんか様子が変だけど……」

「ああ、今朝から変なんだよ。この世界は、自分の夢だって言い張っててよ」


 桜子の疑問にクロちゃんが答える。変、という言葉に僕はムッとした。


「だって、おかしいでしょ! 二重人格だった僕とクロちゃんは双子になっているし、逢原さんにいたっては、名前が同じの双子ってどう考えてもおかしいでしょ!!」


 通学中の生徒や通勤中の会社員が、喚いている僕を白い目で見ているが、今はそんなこと気にする余裕はなかった。


「ちょ、ちょっと落ち着いてよ史郎っち!」


 騒ぐ僕を、桜子がどーどーと宥める。


「双子で同じ名前なんて、よくあることじゃん! そりゃ漢字も同じなのは珍しいけどさ!」


 僕の疑問は、珍しいの一言で片づけられてしまった。


「! おい、急がねえと本当に遅刻しちまうぞ!」


 携帯の時計を見た、クロちゃんが叫ぶ。


「ホントだ! 皆走ろう! ほら、史郎っちも!」


 皆が学び舎に向かって走り出す。

 桜子に背中を押され、僕も走り出した。

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