二重人格と双子

 夢だと自覚したのに、何故か僕の目は覚めなかった。


 突然、僕の目の前に現れたドッペルゲンガーに急かされ、僕は朝ごはんの用意をさせられる。

 とりあえず、トーストと目玉焼きを二人分、僕と彼の分焼いて、食卓に並べる。


「いっただきまーす!!」

「……いただきます」


 食前の儀式を終え、僕達は食事を始める。

 ガツガツと、彼は美味しそうにトーストにかぶりつく。


 僕はそんな彼の姿をじっと見る。見れば見るほど、彼の姿は僕そのものだった。髪の色、目の形、ホクロの位置まで、瓜二つだった。

 唯一違うのは、声だ。彼の声は僕と同じではなく、もう一つの人格と酷似していた。


「なんだよ史郎、俺の顔に涎でも着いているのか?」


 僕がジロジロ見ていることに気付いた彼は、口元を手の甲で拭う。


「いや、別に涎は着いていないけど。……君って、クロちゃんだよね?」

「何当たり前のこと聞いてんだよ、そうに決まってんだろ」


 牛乳を飲みながら、彼は答える。


 予想はしていたけど、眼の前にいる彼の正体は、クロちゃんだった。


「ねえ、僕とクロちゃんの関係って、何だっけ?」

「寝ぼけてんのか? 俺と史郎は双子だろ、俺が兄で史郎が弟」

「双子……」

「……本当に寝ぼけてるみたいだな。嘘だよ、本当は俺の方がが弟だ」


 現実世界ではクロちゃんは僕の別人格だけど、どうやら夢の世界ではクロちゃんは僕の双子になっているみたい。


 僕は試しに、自分の頬をつねってみる。

 全然痛くない、やっぱりこれは夢だ。とてもリアルな夢だ。


「本当にどうしたんだ、史郎? 何かあったのか?」


 心配そうな眼差しで、クロちゃんが僕のことを見てくる。


 僕は思い切って、彼に話した。

 これは僕の夢であること。僕が二重人格であること。クロちゃんが本当は僕の頭の中の存在であることを話した。


 それを聞いた、クロちゃんの反応は……。


「馬鹿かお前?」


 だった。馬鹿とは失礼な、本当のことなのに。


「だってよ、考えてもみろよ。二重人格と双子、どっちが現実味を帯びていると思う?」

「それは……」


 僕は言葉に詰まる。

 そりゃ、二重人格より双子の方が圧倒的にリアルだ。


「だいたい、この世界が夢だって言われて、信じられるわけがないだろ。俺は夢じゃねえ、ちゃんとここに存在している」


 確かにクロちゃんの言う通りだ。

 いきなり誰かに「お前は存在していない、これは夢だ」なんて言われて、信じられるわけがない。


 僕はもう一度、頬をつねる。やっぱり痛くない。


「ほら、早く食わねえと学校に遅刻するぞ。桜子と逢原達も集合場所で待っている」


 話から察するに、僕とクロちゃんそして桜子と逢原さんは、待ち合わせしていて、一緒に学校に登校する予定らしい。

 夢の中とはいえ、逢原さんを待たせるわけにはいかない。


 僕はいそいで、朝ご飯を口の中に入れ、牛乳で流し込んだ。

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