自殺理由
僕は話を元に戻す。
「でも、なんで、もう一人の逢原さんは、飛び降りなんて……」
よっぽど重い理由があるのだろう。もしかしたら、人には言えない事情なのかもしれない。でも、聞かずにはいられない。僕もクロちゃんも、あと桜子も当事者になった。理由を聞かないわけにはいかない。できることなら、力になってあげたい。僕はそう思った。
「……主人格は十数年前から自殺願望を持っていた。両親が火事で死亡したことが原因」
僕とクロちゃんは驚く。まさか逢原さんの両親も亡くなっていたなんて……。
「……私の人格入れ替え条件は、一秒間に瞬きを三度行うこと。だが、他にも入れ替わる方法がある。それが気絶。片方が意識を失えば、自動的に人格は入れ替わる」
そういえばクロちゃんが逢原さんに頭突きをしたら、入れ替わっていたな。知らなかった、そんな方法があったんだ。
「……だから主人格が自殺をする度、自殺行為によって意識を失う度に、主導権を得た私が自殺を止めていた」
「もしかして、詩織っちもクロやんみたいに身体能力が高くなるの?」
桜子が尋ねる。僕もその点はどうなのか、ちょっと気になっていた。
「……そう。ビルからの落下中に主人格が気絶して、私が自殺を阻止していた。あなたの別人格がやったように、壁を蹴ることで落下速度を落として」
「(そういや、逢原って体力測定もそこそこ高かったな)」
クロちゃんが納得する。
もしかしたら、この前不良に絡まれた時、僕が助けなくても逢原さんだけで何とかなったのかもしれないのでは。
そう疑問を述べると、逢原さんは目立つことは控えたいから、本当に危ないときにしか力を使いたくないと答えた。なるほど、納得。
「……主人格が自殺しないように、私が身体の主導権を握り、なるべく入れ替わらないようにしていた。だが最近、稀に、私が睡眠時に主人格に入れ替わってしまうことがある」
「(寝てる間に、無意識に瞬きしたのか?)」
「(さあ、どうだろう)」
逢原さんは話を続ける。
「……今回はとても危険だった。あなたと裏のあなたがいなければ、私達は死亡していたかもしれない。礼を言う」
逢原さんはお辞儀をする。どういたしまして。
「気にしなくていいよ……それより、逢原さん」
僕は真剣な物言いで彼女に話しかける。
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