断った理由
「……紅史郎。以前、あなたの告白を私が断ったことがある。覚えている?」
忘れるわけがない。あの時のことは今でも鮮明に覚えている。とても悲しくて、とてもショッキングな、出来事。多分、両親の死と同じくらい、忘れることのない記憶。
当事の記憶を思い出して、少し僕のテンションが下がった。
「……断った理由が、これ。私が多重人格であること」
「え? それってどういう――」
僕が聞き返すよりも早く、逢原さんが答えた。
「……この身体の主人格は、私ではない。さきほどビルから飛び降りたのが、本当の人格」
『!!』
その場に衝撃が走った。普段はお喋りな桜子やクロちゃんも無言になる。
部屋の中に、妙な静けさが漂う。
その雰囲気を最初に壊したのは、逢原さんだった。
「……主人格を差し置いて私が恋愛をすることは、主人格の人生を壊すことになる。それは避けたかった。だから、貴方の告白を断った」
そういうことか。
「(なるほどな……主人格の身体を勝手に使って恋愛なんて、そんなの褒められた行為じゃねえよな。俺だってそんなことしねえ)」
クロちゃんは勝手に僕の身体で喧嘩していたけどね。
そのことを責めるとクロちゃんは「それはそれ、これはこれ」と言う。まったく。
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