もうひとり

「あ? なんだそりゃ」


 クロちゃんがもっともな反応をする。どういうことだろ、自分の意思じゃないって。


 もしかして、誰かに落とされてのか!?

 だったら、僕はその犯人を許さない。クロちゃんに頼んで、犯人をボコボコにしてやる。


「……正確に言うと、飛び降りたのは私という人格ではない」


 次に発せられた言葉も、これまた意外なものだった。ゆっくりと逢原さんは自分の胸に手を当てる。


「……飛び降りたのは、別の人格の方」


 え、それって……。


「詩織っちも二重人格者なのかい?」


 僕が思うよりも先に桜子が言う。桜子の質問に、逢原さんは頷いた。


「マジかよ……」


 クロちゃんが驚く。僕も仰天した。まさか逢原さんも僕と同じ多重人格者だったなんて。


「(なんか親近感を感じるな)」

「(史郎……)」


 クロちゃんが呆れる。


「……表のあなたと話がしたい」


 逢原さんがクロちゃんに向かって話す。『表のあなた』とは僕のことだろう。僕に話? 何だろう?


「分かった。ちょっと待て」


 クロちゃんはメガネをかけて僕にチェンジする。


「史郎っちに戻ったの?」

「そうだ」


 メガネのずれを直しながら、僕は肯定する。


 逢原さんが僕に話しかけてきた。

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