不死身少女を救出

 僕は即座にメガネを外して、クロちゃんと交代する。いつもの嘔吐感が僕達を襲ったけど、今はそんなこと気にしている場合ではない。


 肉体の主導権を得たクロちゃんは、凄まじい瞬発力でダッシュする。

 それは目にも止まらない速さだった。もはや人間技ではない。もしかしたら車よりも速いかもしれない。

 クロちゃんは一瞬でビルに近づき、今度は壁を蹴って、ビルを登った。さながらゲームに登場する忍者キャラクターのように。


 そして、落ちてきた人間を空中で受け止めた。


 その後、ビルの壁を蹴って落下速度を軽減。その人を落とさないようにガッチリと掴んで。無事、地面に着地した。


「ふー、ギリギリセーフっと」

「(ナイス、クロちゃん!)」


 僕は頭の中で親指を立てる。でも身体は動かない、今身体の主はクロちゃんだ。


「おい、大丈――」

「あ゛あ゛あ゛あ゛ア゛」


 クロちゃんがその人に声をかけようとしたその時だった。


 突如、クロちゃんの腕の中で、その人が暴れだしたのだ。まるで陸に上げられた魚のように、バタバタと荒れ狂う。


「お、おい落ち着けって!!」


 慌ててクロちゃんがその人を宥める。だがその人は暴れるのを止めない。


「ったく! 落ち着けって言ってんだろ!」


 痺れを切らしたクロちゃんはその人のおでこに頭突きをする。

 ゴンっといういい音が鳴る。

 その人はがくっと、首を後ろに曲げる。どうやら気絶したらしい。


「(ちょっと、乱暴な……)」

「(仕方ねえだろ。気絶でもさせなきゃ、止まらねえんだから。それにちゃんと手加減し……おい、史郎! こいつって)」

「(! この人……!)」


 雲で隠れていた月が顔を出し、その人の顔を明るく照らす。


 この顔に見覚えがあった。いや、見間違えるわけがなかった。この顔は僕が三年以上憧れ続けた、僕の心魅了し続けた、とても可愛らしい顔。


「(あ、逢原さん!)」


 僕は驚愕した。ビルから飛び降りたのは他でもない、あの逢原詩織さんだった。


「史郎っち!」


 桜子が僕達の方に走ってきた。


「ねえ、史郎っち。何が起こったの? 今史郎っちがもの凄いスピードで走って……て、詩織っち!? 何で、こんな所に!? もしかして不死身少女って詩織っち!?」


 どうやら誤魔化せる雰囲気ではない。

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