取材

 廃ビルまではかなり距離があるらしく、結構歩いたのにまだ着かない。こんなに遠いのなら自転車でも用意すればよかったかな。そんなことを考えながら、僕は桜子の隣を歩く。


「ねえ、ねえ史郎っち」

「何?」


 歩いている途中で桜子が僕に話しかけてきた。


「史郎っちは、どんな子だと思う? 噂の少女」


 僕は考えてみる。

 不死身少女か……。オカルトに容姿なんて関係ないだろうけど。

 ビルから飛び降りても無傷な少女……もし生きた人間ならきっと筋肉ムキムキで、かなりのつわものなのだろうな。ゴリラみたいに頑丈な身体を想像して、ちょっと可笑しくなり僕は心の中で笑う。


「情報ではどんな感じなの?」


 まあ、そんなゴリラみたいな人間がいたら、世間がほっとくわけがない。テレビのびっくり人間ショーで出演間違いなしだ。一人笑いを堪えながら、桜子に不死身少女の容姿がどのようなものか聞いてみる。


「うーん、それがまちまちなんだよね。短髪の学生だったり、長髪のOLさんだったり」

「なんだそれ。じゃあ男かもしれないのか?」

「不死身少年より不死身少女って言った方がオカルトチックじゃない?」


 たしかに、不死身少年だと漫画の登場人物に聞こえる。トイレの花子さんとか雪女とか口裂け女とか、幽霊って女の人のイメージが多いし。

 でも正直どっちでもいいと思うな。


「あ、着いたよ! このビルだよ」


 そうこうしているうちに目的地にたどり着いたらしい。


 桜子が指差した方には、いかにも何か出そうな、ボロい廃ビルがあった。天井には穴、窓にガラスは張られておらずむき出し。

 雲に隠れた月から放射される微量な明かりが、その不気味さをより醸し出していた。一瞬、ビルの中で明かりが見えたような気がしたけど、多分気のせいだ、うん。


「よ、よし入ってみようか」


 さすがの元気少女も、声が震えていた。怖いのなら調べるなんて言わなきゃいいのに。桜子とは中学の頃からの付き合いだけど、彼女はいつもこうだ。怖いのに進んでホラー映画やホラースポットに突っ込んでいく。そのたびに僕を巻き込むのはやめて欲しいな。


 僕達は廃ビルに足を踏み入れる。

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