逢原さんは来ない

「それじゃあ行こうか!」


 出発しようとする桜子を僕は止めた。出発するにはまだ早い。


「ちょっと待てよ、逢原さんがまだだろ」


 肝心の逢原さんがまだ来ていない。彼女がいないのに。二人で現場へ向かうわけにはいかない。逢原さんを待たないと。

 それにしても逢原さんが遅刻するなんて珍しいこともあるもんだ。


「あー、それがね……さっきメールが来たんだけど。詩織っち、急用ができたとかで来れなくなったみたいなんだよねー」

「(な、なんだって!? 逢原さんがいないなんて……)」


 僕はがっかりする。なんかやる気が削がれた。ああ、もう帰ろうかな。


「まあ、まあ、そんなにがっかりしないで。あ、アンパン食べる?」


 桜子が袋から一つのアンパンを取り出し、僕に手渡してくる。


「アンパンも牛乳もいらないから、さっさと終わらせよう」


 帰ろうかと思ったが、それはさすがに桜子に悪い。僕はアンパンを桜子に返した。

 それに僕も胡散臭いとは思うが、興味がないわけではない。不死身少女の正体は気になっていた。


「そんじゃあ、噂の廃ビルに行きましょうか!」


 そう言う桜子の後ろを僕は歩き始めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る