アンパンと牛乳

 僕のいやな予感は的中した。できれば当たってほしくなかったけど、見事に的中してしまった。


 夜の七時頃、僕は校門前にいた。周りには他の生徒はいない、というかいるはずもない。きっと全員家でのんびり過ごしているに違いない。五月になったとはいえ、まだ夜は少し寒い。もう少し着込んでくれば良かったかなと、少し後悔する。


「(zzz……)」


 クロちゃんはのん気にいびきをかきながら眠っている。夕方の第十三回新聞部定例会議の時からずっとだ。僕だってクロちゃんみたいにだらだらしたいのに……。癪なので起こそうかなとも思ったけど、後でギャーギャーうるさくなりそうなので、やめておいた。


「遅いなぁ、二人とも」


 夜風が頬を撫で、僕は身震いする。約束の時間はとっくに過ぎているのに、二人の気配は全くしない。


 桜子の発案で、僕達は事件の調査を行うことになった。現地調査というやつだ。とは言っても、ヒーローの方はコンビニだったり、公園だったり、出没地点がバラバラなので、今回は不死身少女が出る廃ビルに行くことになった。調査に行くその前に校門前に集合というわけだ。


「やあやあ、おっまたせー!」


 手を振りながら、元気よく桜子がこちらに走ってきた。首からカメラをぶら下げ、手に何か白い物を持っている。それはコンビニのレジ袋だった。


「ごめんねー、ちょっと準備に手間取ってね」

「準備?」

「張り込みといえば、アンパンと牛乳でしょ?」


 桜子がコンビニ袋の口を大きく開き、僕に見せつける。袋の中はアンパンと牛乳だらけだ。

 アンパンと牛乳を食しながら張り込みだなんて、刑事ドラマの見すぎだ。というか今どきそんなベタな張り込みをするドラマもないだろうに。というか、このアンパンと牛乳の数……一体何時間張り込むつもりなんだろ桜子は。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る