まぐれ
「紅く~ん、君にはちょっと痛い目にあってもらおうか」
運動部員達が指をポキポキとならす。
どうやら、やる気満々みたいだ。面倒くさいから退散しようと思ったが、こいつら、屋上から出る扉を背にして、俺が逃げないように立ち位置を考えている。
部員達が一斉に俺に飛び掛ってきた。
「(面倒だな)」
俺は相手の一人目の蹴りをかわす。一人目の右足は空振り、空を舞う。今度は膝蹴りをくり出してきたが、それもかわす。
「(敵は三人。俺のパワーを持ってすれば、こんなやつら敵じゃないが……下手したら、こいつらに重い怪我を負わせちまうのも悪いし)」
次は二人目の拳をかわす。敵の右手、左手、左手、右手、連続パンチを避けた。
「(俺がカッコよーく、かつ軽―くこいつらを蹴散らすのも良いが、それだと史郎が皆からヤンキー扱いされるだろうし……お、こいつ空手経験者だな、他のやつとは動きが違う)」
敵の間をかいくぐり、サイドからの攻撃をかわす。
「(かといって、殴られるのもなあ。顔に傷つけたら史郎に怒られるだろうし。何より俺自身殴られるのは癪だし……)」
今度は三人がかりで相手のラッシュを連続で避ける。
「(あ、間違って殴っちまわないように、手はポケットに入れておこ)」
敵は体勢を崩そうと、俺の足を狙ってくるが、俺は跳んでかわす。
「(zzz……)」「
(俺がこんな状況だってのに、史郎はのん気にまだ寝ているし)」
『はぁはぁ……』
俺が攻撃を避け続けていると、三人はすでに虫の息になっていた。そりゃそうだな、さっきから全力で攻撃しているのに、全部空振りだもんな。ちなみに俺の息は上がっていない。
「な、なんなんだよお前……」
「ぜぇぜぇ、こっちは三人なのに一発もあたらねえ」
スポーツマン達の戦意が削がれている。
よし、ちょっと脅かしてやるか。
俺は、足を振り上げて、少し強めに、屋上の床にかかと落としをする。
バギャン! という、轟音とともにほんの少し、校舎が揺れた。そして、屋上の床に少しヒビが入る。
ヒビを見た部員たちは「あわわわわ」と取り乱していた。
俺は畳み掛けることにする。
「さっきも言っただろ、あのスポーツテストはまぐれだって。そしてこのヒビも、ま・ぐ・れ。ドゥーユーアンダースタンド?」
俺はさっきの英語の授業で習った単語を使ってみる。
「だからさ、もう絡むのやめてくんない? もしかしたらまたまぐれで、今度はあんたらの骨折っちゃうかもしれないっすよ、先輩」
俺は声色を低くして、三人を脅す。
三人はコクコクと何度も頷き、了承してくれた。
うんうん、平和的に解決できてよかった。
俺は屋上に怯えている運動部員達を残し、昼飯の続きをするために教室へ戻った。
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