ハンドボール投げ

 次の種目はハンドボール投げだ。ボールを投げて飛距離を計る、アレだ。


「(さて……)」


 さっきは少し力を出しただけで、周りが騒がしくなったから、今回は負けてやるか。大人の対応ってやつだ。て俺、生まれてからまだ十年しか経ってないな。この場合、年上に華を持たせるって言った方が正しいか。


 俺は、順番が前のやつの投球を見てみる。

 そいつの記録はニ十五メートルほどだった。誰も何も言わなかったから、多分ニ十五が普通な成績なのだろう。


 よし、俺もニ十五メートルを狙ってみるか。


 俺はボールを持つ。初めて直に触れるボールの感触にテンションが上がる。表面がザラザラしていて、妙に心地いい。ずっと触っていたいぜ。


 高揚した気分に任せて高記録を出してしまわないように、俺は深呼吸をして気持ちを落ちつける。


「よしっ!」


 俺は球をそーっと、かるーく、投げた。

 投げられたボールはゆっくりと放物線を描き、やがて地面に衝突した。

 体育委員が投球位置から落下位置までの距離をメジャーで測る。


 記録は二十三メートル。ちと手加減しすぎちまったかな。


『おい見たかよ今の』

『ああ、紅のやつ、身体を動かさずに手首のスナップだけで、二十メートル以上なんて記録だしやがった』


 また男子達がヒソヒソと何か言ってる。変だな、さっきのやつより記録低いのに。

 見ると桜子が、親指を立てて俺の方に突き出している。「ドンマイ、気にするな」とでも言いたいのかな。気にしねえよ、こっちは手加減してんだ。

 逢原はまた俺をジーっと見ていた。こういう時、史郎はどう反応するんだろ。とりあえず、ウインクでもしておくか。


 俺は残りの種目も、こんなふうに適当にこなした。たびたび男子がヒソヒソと言っていたが、気にしない。

 四時限目も難なくクリアした。

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