第25話

 昼休み、学食で何か食べるかな……と食券を買いに行こうとすると――


 いた。


 その容姿を一目見ようと人だかりができている。芸能人かよ。

 見つからないようそっと教室から出ようとすると――


「藤原センパイ」

 見つかっちゃったかー、くっそー。


「な、何かな……小河さん」

 恐る恐る振り返ると、やっぱり彼女だった。


「お昼一緒に食べませんか?もちろんセンパイ――」

 その先を言わせないように言葉を遮る。


「お、おう……分かったから生徒会室に行こう」


「……? 分かりました」

 なんとか危機は脱出した(?)かな……

 いや、脱出は出来てないけど最悪の事態は逃れた、というところか。


 *


「なんで教室まで来るのさ」

 心臓に悪い。


「そう思えばLine交換してましたね……」

 いや、君分かっててやったよね……?


「でも、顔見てお話ししたかったので♪」


「次からはやめてくれ」


「なんでですか〜……」


「俺が殺されてもいいのか?」


「ダメです。そんなことはさせません」

 ……いや、君の行動が俺を殺すんだけどね。


「じゃあとりあえず教室に来るのはやめてくれ。あと弁当もらっていいか?」


「分かりました――」

 と言いつつ、持参してきた弁当を手渡す。

 綺麗なパステルピンクの布に包まれたそれは、人生初の女の子の手作り弁当という経験にはふさわしいものだった。


「いざ、実食――」


 *


 布の包みを解き、蓋を開ける――

 そこには色とりどりの……


「ってあれ?」

 思わず口に出してしまう。それは思ったより茶色をしていたからだ。


「せっかくだからかわいいお弁当を、と思ったんですけど、和食しかレパートリーがなくて……」

 肉じゃが、ほうれん草のおひたし、きんぴらごぼう……確かに和食ばかりなのだが……


「神か。僕は和食、もとい白飯が好きなんだ――朝から味噌汁と白米食べてるぐらいな」

 僕は朝から米を食べないと生きた心地がしない変態だ。そういう風に刷り込まれているのだ(迷惑な話だ)。


「よ、喜んでくれたようで嬉しいです」

 心なしか顔を赤らめる彼女をよそに、その弁当に手をつけた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る