とある王女の邂逅。
11 私の勘違いだったみたい。
神暦1513年4月18日
二国間の国境になっている平原を監視するため建設されたラーデン城砦。
街道沿いの小高い丘の上にあるラーデン城砦は、与えられている監視任務に比べると不釣合いなほど堅固な城壁を有している。
リーフェンシュタール王国の説得力に乏しい対外発表(隣国のソルフィリア王国向け)では、嫌がらせ染みた少人数の夜間襲撃や魔境から襲来してくる凶暴な魔物に対応するためという至極真っ当な理由でラーデン城砦は建設されたことになっている。実際のところはソルフィリア王国軍の侵攻を国境付近で阻止するため、構造物の大半が永久築城で築かれているからだ。反撃可能な兵力が後方地域に集結するまで持久できる陣地防御用の城砦になっていて、ソルフィリア王国の領土に逆侵攻する場合は物資保管用の兵站拠点にもなるはずだった。
水平ではない丘の上に重い構造物を築くため、何度も盛土を繰り返し、盛土した土砂が崩れ落ちないように土嚢で囲ってから踏み固める。それから目が眩むような量の煉瓦を丁寧に積み上げて、十mに及ぶ高さの堅固な城壁が築かれた。丘の周囲には土砂を掘り出して作られた深い水堀があり、跳ね橋を使わなければ城砦内部に入ることもできない。城砦内部の倉庫に備蓄されている保存食や生活必需品などの各種物資は、小規模の城郭都市が外部からの補給なしで半年間賄えるほどだった。
一応はリーフェンシュタール王国の友好国ということになっているソルフィリア王国を無駄に刺激しないために「城砦」と名付けられているけど、増強連隊規模の四千~五千名の人員が常時収容可能な紛れもない「要塞」だったりする。
……私の見間違いであって欲しいな。
限られた国庫を毎年圧迫するほどの建設予算と十年単位の長い建設期間を要して完成させた難攻不落の要塞――そんなラーデン城砦が数千人に及ぶソルフィリア王国から流れてきたと思われる避難民達に包囲されていた。
城砦に駐屯している兵士と包囲している避難民の彼我兵力差が開きすぎているせいなのか、ラーデン城砦の指揮官は篭城策を取っているみたい。限られた兵力で全周にわたって包囲されているラーデン城砦を守り抜くのは不可能に近いから、城壁を盾にした籠城は正しい判断だ。避難民の集団を下手に刺激した場合、兵力不足で防備が薄くなっている箇所から侵入されて城砦全体が陥落しかねない。
ラーデン城砦に駐屯している部隊の人員は減少の一途を辿っていて、今では大きすぎる城砦の保守管理に必要不可欠な二個中隊(四百名弱)規模でしかない。二千名前後の兵士で維持されてきたラーデン城砦の兵力減少の主な理由は、ソルフィリア王国側が無意味な魔境への侵攻で国力を一方的に擦り減らしているからだ。仮想敵国のソルフィリア王国に攻め込まれる心配がないのなら、侵攻阻止という名目で配備されている余剰兵力を順次抽出しても問題はないはずだった。
……お母様、内乱を想定して国境周辺の兵力をかき集めないでください。
「あれ、街道で行軍している兵士達とすれ違ってないよね?」
お母様が内乱(粛清)を決意したのは、望んでもいない私の婚約が決まりそうになってからのはず。中隊規模の騎兵に護衛されている私の出発準備の時でさえ、蜂の巣をつついたような大騒ぎになったのだ。十日足らずの短期間で、千人単位の兵士を移動できるわけがない。最初から定員を満たす兵士が配備されていなかった?二個中隊しかラーデン城砦に配備されていないのは経費節減のため?内乱のための戦力集中じゃないの?絶体絶命の危機になりかけている私の疑問は尽きない。
「アレクシア。城門の上で歩哨に立っているラーデン城砦の城兵は、街道の真ん中で立ち往生している私達の車列を視認してると思う?」
「はい。この距離で王家の馬車を見間違うことは、ほとんどありません」
避難民に包囲されていても、危険を伝える狼煙ぐらい出せるでしょ?
ソルフィリア王国から無断越境して逃げて来る避難民の対処や魔物の動向を監視して、国境に対処不能な異変があった場合は、後方に増援を求める伝令を出してから持久戦に徹するのがラーデン城砦の役目だったはずなのに……。
自分の致命的な運の無さに溜息が出そうになる。
暗部の連絡を待つために滞在予定だったラーデン城砦が、戦闘寸前の危険な状況に陥っているのだ。馬車の隣の席に座っているアレクシアの姿を見てみれば、警戒感を剥き出しにして戦闘態勢に移行している。私は甘えさせてくれる優しいアレクシアのほうが好きなので、早く元の優しいアレクシアに戻ってください。
そりゃあ、私という極めて都合のいい人質の存在を敵かもしれない避難民側に知られてしまったわけだしね。リーフェンシュタール王国の王族の一員である私を人質にすることができれば、少なくても食料と水を手に入れることが可能になる。
外交使節団という建前を優先しなければならなかったから、王家だけが許されている特別な旗を馬上で
お姫様から乳牛に転職してたけど、今度はネギを背負った鴨に転職するらしい。
エロゲー(それもドン引きするぐらいのガチな陵辱系)の輪姦されるヒロインみたいになりそうだから、避難民の集団の人質にはなりたくない。この世界では、要求通りの身代金を支払うことができなかった男は嬲り殺しにされて、女は穴という穴を使われて壊れるまで酷使されるのが相場なんだよね。ハーグ陸戦条約(陸戦ノ法規慣例ニ関スル条約)にあたる国際条約が結ばれていないから、捕虜と非戦闘員の扱い方は以前から行われてきた曖昧な慣例しかないし。
問題はラーデン城砦を包囲している避難民の集団が、ソルフィリア王国の王族に圧政されていたこと。避難民が王族は絶対殺すマン状態だったら、私が死ぬ。間違いなく死ぬ。避難民に輪姦された後で絶対に嬲り殺しにされる。ソルフィリア王国の圧政と関係してなくても、王族という存在そのものを憎んでいるかもしれない。
私は左腰のベルトに吊り下げている貴金属と宝石でちりばめられた鞘を撫でる。
私の身の回りの世話をしてくれている貴族階級出身の侍女達が、安全なはずの城内で帯剣を許されているのには理由がある。ようは清らかな心身を穢される前に潔く短剣で自害しなさいという意味。以前、そういうレイプ事件(主な被害者は嫡男がいない貴族家の令嬢だったらしい)が頻発した影響で、刃物があまり好きではない私にも自害用の短剣を持たされている。
あぁ……自分の首に突き刺す短剣のことを想像しただけで、遠い目になりそう。
まずは避難民の代表者と話し合いをしなければならない。あの集団の中に決定権を有している代表者がいればいいのだけど、代表者がいなかった場合はとても不味いことになる。集団の意思統一がされていて、代表者に決定権があるのなら上手く制御することも可能だけど、代表者もいない群集心理に支配されているだけの集団だったら危険すぎる。感情の捌け口を求める暴徒と何ら変わらないからだ。
冷たい言い方かも知れないけど、リーフェンシュタール王国は国境を越えて逃げてきたソルフィリア王国の避難民を保護して助ける義務などないのだ。厄介な隣国の避難民を誰も彼も救い出していたら、リーフェンシュタール王国の限られている国庫があっという間に尽きる。国民の義務として課せられている税も満足に納めていない他国の避難民は、ただひたすら邪魔な存在。包囲を続けている避難民が退去勧告に大人しく従ってくれるかが、運命の分かれ目になるだろうね。
遮蔽物が何もない街道の二キロほど先にいる避難民の集団――敵勢力の分厚い包囲網を強行突破して、ラーデン城砦内部へ逃げ込むことは可能だと思う。だけど、その方法だと私の護衛をしてくれているベイツ伯爵家の騎兵や侍女達に無用な犠牲が出てしまうかもしれない。味方の損害を最小限に抑える方法は、弓矢よりも射程距離が長いウィンチェスターライフルを積極的に使用して、敵勢力の攻撃が届かない遠距離から敵勢力の鼻面を引き回し続けること。
停止している馬車の車窓から、外の様子を眺める。
「ここは見晴らしがいい平原で、まばらに生えている下草も騎兵の機動力を阻害しない程度でしかない。分隊単位で散開して、効果的に敵をアウトレンジできる」
敵勢力の包囲が崩れなければ、弱い箇所を何度も襲撃すればいい。
「避難民のほとんどが徒歩。こちらの騎兵に追随可能な騎馬が敵勢力にあったとしても、近づかれる前にウィンチェスターライフルで撃ち倒せる。護衛対象の私がいると騎兵が全力を出せないから、この馬車は反転させないと駄目みたい」
私は護衛指揮官のアレクシアに交戦許可を与える。今回の相手は魔境から出てきた魔物と違って、同族の人間なのだ。それも他国の貴族に庇護を受けていた平民なのだから、全責任を取るのは王族である私の仕事になる。
「先制攻撃はしないでください。リーフェンシュタール王国側から戦端を開いたと言われかねませんから。こちらの制止を無視した避難民の接近次第、各自の自由裁量で反撃することを許可します。反撃方法は分隊単位で散開させての継続躍進。深追いはしない攪乱重視で、遠距離での戦闘を周知させなさい」
分隊単位で行われる一斉射撃を前提とした騎乗突撃、騎乗突撃を容易にするための側面援護、速射性が高いウィンチェスターライフルの銃弾を撃ち尽くしたら後退しながら装填。そして、また騎乗突撃に戻る。
笑える。私が命令していることは古典的な歩兵分隊の基本戦術である「射撃と移動」だった。機関銃の弾幕射撃の猛威に晒されて、被害のあまり忘れ去られてしまった兵科の騎兵でやるものじゃない。
「それから、あの集団の中に代表者がいるか確かめてください」
「はい、了解しました」
許可もなく国境を越えてきた「大規模の盗賊団」に投降するよう促したが、その提案を拒否され、攻撃されたので仕方なく抵抗する者を処断した。ソルフィリア王国以外の周辺諸国には、そう通告するつもり。恨み言なら、国を傾けても魔境侵攻を諦め切れなかったソルフィリア王国の王族に言ってください。
それから三時間後――ラーデン城砦の指揮官と避難民の代表者から語られた説明の内容に、私は小首を傾げることになる。
◇◇◇
……状況の変化が急すぎて、頭痛がしてくる。
着席している私の目の前で跪いて顔を伏せている二人がラーデン城砦の指揮官と避難民の代表者らしい。殺気立っていた私達の勘違いで、ソルフィリア王国から避難してきた数千人もいる民間人を虐殺しそうになったみたい。アレクシアに頼んで鎮静作用があるハーブティを淹れてもらおう、それも物凄く濃いのを。
「王女殿下!この度は多大なご迷惑をお掛けして、誠に申し訳ありません!」
「リーフェンシュタール王国に助けを求めてしまった我々の責任なんです!」
無言のままで呆れ果てている私の訝しげな視線を無視して、がばっと顔を上げた二人が一斉に言い訳を捲くし立てる。その瞬間、私の背筋が永久凍土のようにピキピキと凍った。聞くに堪えない意味不明な言い訳を続ける二人から視線を外して、私の後ろに控えているアレクシアのほうへ恐る恐る視線の向きを変える。
……正直、後ろを振り向かなければ良かった。
そこには、絶対零度の冷め切った微笑み(全然、目が笑ってない)を浮かべているアレクシアがいたからだ。逃げ出せるなら逃げ出したい、底冷えがする殺気駄々洩れの激怒注意報発令中。このラーデン城砦の一室は、何時の間にか厳寒期のシベリアの気候に変わったみたいです。野外にぶちまけた熱湯も一瞬で雪に変わる気温なので、厚着しないと凍死すること間違いなし。私、寒いの苦手なんだけど……。
いつも微笑みを浮かべながら優しく接してくれているアレクシアの豹変ぶりに私が呆気に取られていると、アレクシアが一歩前に進み出て、感情がまったくこもっていない叱責の言葉を二人に投げかけた。
「フランツィスカ王女殿下の許可を得ていないのに関わらず、あなた方は何故その汚い口を開いているのでしょうか?直答することを許されるまで、黙って跪きながら顔を伏せ続ける。それが謁見を賜る時の正式な手順だったはずです」
前門のネズミ、後門のケルベロスみたい。パクっとケルベロスの顎に噛み千切られるのは青褪めている二人だけだから、私は気にしないことにしよう。確かに私の許可を得ていない発言は王族への不敬罪が適用されるから、アレクシアの言葉もあながち間違っていないし。ちなみに不敬罪の刑罰は死刑か終身刑のどちらか。
「リーフェンシュタール王家に対する侮辱を許すわけには参りません」
……隠してあるククリナイフをすぐさま抜きそうになっているアレクシアがマジで怖い。多分だけど、王族相手の礼儀作法がまったく出来ていない二人に対して本気で怒っているみたい。何の後ろ盾もない辺境に飛ばされるような下級貴族は、王城の謁見の間に呼び出されて、王族の誰かと直接会う機会なんてそうそうないだろうし、正しい手順なんかは適当に誤魔化して……はい、誤魔化しません。
ここは身分が一番高い、王女殿下の私が事態を収拾するしかないみたい。
このままだと可哀想なラーデン城砦の指揮官と避難民の代表者が、激怒しているアレクシアに問答無用で処刑されそうな気がする。そういえば、二人から自己紹介もされていないから名前も分からないや。
お互いに冷静になれる時間が欲しい。せめて、一時間ぐらい間を置きたい。
「私への報告は一時間後でいいでしょう。ラーデン城砦の指揮官と避難民の代表者の方は、今回の顛末を冷静に説明できる程度まで落ち着いておいてください。私が聞きたいのは責任追及を避けるための言い訳ではなく、避難民の皆さんがラーデン城砦を包囲しているように見えてしまった理由なのですから」
面倒な問題の先送り。この厄介事が避けられないのなら、冷静になった後で問題を背負い込もう。……アレクシアの凍傷被害が私にも来そうな雰囲気だから、濃い目のハーブティは自分で淹れることにする。
◇◇◇
自分で淹れた渋味の強いハーブティをチビチビと飲み終えてから、すでに一時間が経過している。今度は両名の見苦しい言い訳ではなく、ちゃんとした理由を説明してくれるよう切に願う。視線を送るだけで人を軽く殺せそうなアレクシアは私が丁寧にフォローしておいた。上司と部下の板挟みになって、苦労が絶えない中間管理職の仕事に疲れ切っている中年男性はこんな気分になるんだろうね。
前回と同じく私の目の前で跪いている二人に理由を聞く。
「翼がある山ほどの大きさのトカゲですか……?」
「そうです。その化け物が急に現れたせいで、我々は暮らしていた城郭都市を放棄して泣く泣く逃げ出してきたのです。城郭都市の近くで動きを止めた化け物は腹が減ったら移動するはずですから、それまではこの城砦の近くに居させて下さい」
誰でもいいので、私が分かるように通訳してください。
代表者のマルセルさん――国境に一番近いところにある城郭都市の市長さんが必死の形相で要望を伝えてくる。翼のあるトカゲって、この世界に存在しないはずのドラゴンじゃないの?王都のナミュールに巨大な火柱が上がって、ソルフィリア王国の全土が混乱している時に巨大なドラゴンの来襲って……。
私はレンガ造りでできている赤茶色の天井に視線を向けて、マルセンさんの説明について考えてみる。この世界にいる魔物は魔素の影響を受けて、異常進化を繰り返しているものだ。全長が二m近くあるコモドオオトカゲのようなトカゲはいるみたいだけど、山ほどの大きさをもった固体はいない。巨大な体の基礎代謝を維持しないといけないから、膨大な量の食料が無いと間違えなく餓死することになる。
私が導き出した結論は「非常に胡散臭い」だった。
そんな大きさのドラゴンがいたら、掃いて捨てるほどいる非力な人間がドラゴンの主食になりかねない。それにドラゴンの体が大きければ大きいほど、人目に触れる機会が増えるはずなのに、今まで巨大なドラゴンを見たという目撃情報は一度も報告されていないのだ。娯楽に飢えている平民達がそういった心躍る噂話(原形を留めないぐらい、派手に脚色されて)を聞き逃すとは到底思えない。
テンプレート満載の在り来たりなファンタジー小説じゃあるまいし、非常識の塊みたいな巨大ドラゴンなんているはずないじゃない。もしかして、私が幼い外見をしているから騙しやすいと思われていて担がれている?亡命希望であることを王女殿下の私に悟らせないために、現実ではあり得ない悲劇的な話を捏造してるだけとか?
マルセルさんに視線を戻して、悲痛な表情を浮かべながら質問する。
「……それは恐ろしいですね。それで、犠牲者の方はいらっしゃるのですか?」
「避難の際に若干の怪我人を出してしまいましたが、何とか全員無事に避難することができました」
巨大なドラゴンが現れたはずなのに、死人が一人も出ていない?
信憑性のない話の胡散臭さが一気に増した。これはもう、嘘で決まりでしょ。
「城郭都市の倉庫に備蓄されていた保存食料のほうも、その場に居合わせていた冒険者の方々が寝たまま動かないトカゲの隙をついて、運び出せるだけ回収してくださいました。……ですが、井戸の汲み上げの関係で持ち出す量が少なかった水だけはどうしても足りていないのです」
「水は長時間放置すると微生物や細菌が繁殖して飲めなくなりますからね。移動する距離に応じて、腐っていない新鮮な水が大量に必要になる。けれど、城郭都市にある数が限られた井戸で、時間内に汲み上げるのは無理があったというわけですか」
毒物の混入や投石器で破壊されることも考えて、ラーデン城砦には複数の井戸が設置されているらしい。だから、水を求める避難民達がラーデン城砦を包囲しているように見えてしまったと……馬鹿じゃないの?純然たる軍事施設の城砦に、間諜かもしれない他国の民間人を軽々しく入れるなと言いたい。
今度はラーデン城砦の指揮官であるキュッフル騎士爵へ視線を向ける。
リーフェンシュタール王国の王族である私は、世襲することもできない一代限りの騎士爵の爵位を即座に取り上げることができる。次の女王になることが確定している王女殿下として、それだけの権力を有しているのだ。いい加減な理由でラーデン城砦の中に民間人を入れていたら、騎士爵の爵位返上を覚悟しておきなさい。
「王女殿下。我々は飢渇に苦しんでいる彼等の要望を聞き入れ、城砦の門まで水を運び出していたのです。喉の渇きを訴える避難民達を私は騎士として見捨てることができませんでした。今回の責任は全て私にあります。どんな厳しい処罰でも甘んじて受け入れましょう」
私の勘違いだったみたい。
これで爵位返上の処罰をキュッフル騎士爵に言い渡したら、王女殿下の私が血も涙もない悪役になるよね?口封じすることもできない兵士達の噂話――喉が渇いている避難民に施しの飲み水さえ与えない、自分本位の冷酷無比な王女殿下という人物評価も不味い。常に複数の猫を被っている私は、清楚可憐で「慈悲深い」お姫様なのだ。その事実を覆すような行動は決して取れないし、取るべきじゃない。
キュッフル騎士爵、さっきまで青褪めていたのに腹を括るのが早すぎよ。色々と考えるのが面倒になってきたなぁ。ここは責任問題を有耶無耶にして、すべて放置することにしよう。
「キュッフル騎士爵、それは見上げた騎士道精神の発露ですね。流石はリーフェンシュタール王国が誇る騎士の一人です。これからも大儀を尽くし、悲嘆に暮れているソルフィリア避難民のために尽力してください」
さて、どうでもいい嘘に付き合わされた私は疲れたので寝ようと思う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます