12 品性に欠けたゲスな微笑みを浮かべている。

 神暦1513年4月18~19日


 私は大きなおっぱいが好きだ。それも顔をむにゅっと埋められるぐらいの大きなおっぱいが好きだ。ありもしない職業のおっぱいソムリエを自称しちゃうぐらい、大きなおっぱいが大好きだ。いつも人肌恋しい寂しがり屋の私には、心地の良い安心感を与えてくれる大きなおっぱいがどうしても必要なんです。


 だから私に、自分以外のおっぱいを揉ませてください。


 うっすらと肋骨が浮かんでいるのが分かる私の無乳――AAカップの薄すぎる胸部装甲なんて、何の価値もない。それに比べて、アレクシアの分厚い胸部装甲には夢と希望がいっぱい詰まっている。母乳を飲ませてくれたお母様と乳母のベアトリクスも巨乳だったけど、今はアレクシアの張りのある瑞々しい果実のような巨乳が一番好ましい。大きなメロンを両手で揉んでも良し、サクランボの先端を舌で舐めても良し、二つの柔らかい抱き枕に顔を埋めても良し。まさに良いこと尽くめだ。


 ……私がまだ乳離れできていない可能性が出てきた。


 なぜ私がアレクシアの巨乳について熱く語っているかというと、アレクシアのDカップもある巨乳の谷間に自分の顔を埋めている最中だからだ。寝る前に不安そうな表情を浮かべながら、「……シア姉。大きなトカゲが怖いから、一緒に寝ちゃ駄目?」みたいな心細い感じでお願いしたら渋々だけど頷いてくれた。今夜は確かな温もりを顔全体で感じながら、深い眠りに落ちようと思う。


 駄目だった。アレクシアの肌蹴ている胸元が気になって、眠れそうにない。


 だって、ピンク色をしている形のいいサクランボの先端が私の視界の中に入ってくるんだもん。胸元を凝視しながら、必死に我慢してるけど無理っぽい。うずうずしてきた。吸いたい、無性にちゅーちゅー吸いたくなってくる。サクランボの先端を吸っていい?もう吸っていいよね?こうなったら、吸う選択肢しか残されてないよね?据え膳食わぬは女の恥って言うし、遠慮しないで吸っていいよね?


 私はアレクシアの許可を得るために顔を上げる。


「すぅー……すぅー……」


 寝てた。

 有り得ないことに、完全無欠の護衛兼側仕えのアレクシアが熟睡してた。


 どうりで、私が胸の谷間でふがふが呼吸しているというのに嫌がる素振りを見せなかったわけだ。馬車で移動している時はずっと気を張っていたみたいだし、ふかふかの寝心地の良いベットの中で熟睡しちゃうのはしょうがない。私は熟睡しているアレクシアが起きないようにそっと腕の中から抜け出して、物音を立てないように気を付けながら枕元の傍に立つ。


「いつも私のことを守ってくれて、ありがとう。大好きな私のお姉ちゃん」


 アレクシアの緩く波打った茶色い髪を軽く撫でてから、おでこにキスをする。


「シア姉、サクランボの先端を吸っていい?五秒以内に返答がなかった場合、勝手に吸わせていただきます。ごー、よんー、さんー、にー、いちー。はい、終了」


 起きないことは確かめたし、物凄い小声だったけどアレクシアの承諾も得た。


「……大丈夫、気づかれてない。これは私の野望のためなんだ。野暮ったいネグリジェの前ボタンを吸いやすいように少し外すだけだから。この隔離されている貴賓用の寝室には、サクランボの先端を吸いたくなった私と熟睡しているシア姉しかいないから安心して。緊張しすぎて、吐きそう」


 細心の注意を払いながら、アレクシアが着ている緑色のネグリジェの前ボタンを外していく。大量の冷や汗が出る。振動センサー付きの時限爆弾を解体している、警察の爆弾処理班みたいな気分。ロングサイズのベットに伏せながら、震える手でアレクシアのボタンを一個一個丁寧に外してるし。ネグリジェのボタンを外している手元が少しでも狂ったら、アレクシアの怒りが爆発しそうで怖い。


 ごめんね、アレクシア。ちょっとだけ、ちょっとだけでいいの。ピンク色のサクランボの先端を赤ちゃんみたいにちゅーちゅー軽く吸うだけだから。それ以外のことは……舐めたり噛んだりしないから、意志の弱いおっぱいソムリエの私を許して。


「はぁ~……ようやく外し終わった」


 額に浮かんだ汗を手の甲で拭い、困難な作業をやり遂げた達成感に酔いしれる。


「さて、吸わせていただきます」


 手を合わせから、穏やで可愛い寝顔を浮かべているアレクシアに向けて四つん這いで近付いていく。サクランボの先端を吸おうと、胸元に顔を寄せた瞬間――


「ごがっ!?」


 寝惚けているアレクシアに首を絞められた。


 アレクシアが馬車の中で言っていた常在戦場って、熟睡していても周囲の気配が察知できるようになることだったの?右手の手のひらだけで、私の気道を器用に塞がないで。このまま首を絞められると酸欠になって気絶しちゃうから、お願いだから手のひらの力を緩めて。ごめんなさい、不埒な考えを持ち続けていた私が悪いんです。


「フラン、まだ起きてたの?いい加減、寝なさい」


「げほっ…………はい、シア姉。大人しく寝ることにします」


 ◇◇◇ 


 ラーデン城砦周辺にいる避難民の問題は、志願して責任者になってくれたキュッヘル騎士爵に丸投げしてある。これで避難民相手に頷くこともできない私は、責任を追及される心配がない無関係の立場になった。愛国心と忠誠心が溢れている彼のことだ。避難民関係の煩わしい様々な些事から私を守ってくれるに違いない。後で面倒な問題が起きたとしても、騎士道精神を変に拗らせたキュッヘル騎士爵の独断専行だったと言い張って、私は知らぬ存ぜぬを突き通すつもりだ。その場の雰囲気に呑まれて事後承諾しただけの私を巻き込んだら、お母様に告げ口して騎士爵の爵位を返上させてやる。


 寝れそうで、寝れない。


 日が暮れてから大分経つというに、城砦の内部が何やら騒がしい。

 過度の睡眠不足はお肌の大敵なのだ。だから、私をゆっくり寝かせてください。


 ぐーぐーぐー。


「うにゃ?」


 自分の腹部から感じる鈍い痛みで、ウトウトと眠りに落ちかけていた意識が急速に覚醒しだす。自分の手足を動かしていないのに、凄い勢いで周囲の風景だけが流れていく不思議な感覚。暗闇に支配された通路を照らし出している燭台の灯りが風を受けてユラユラと揺らめく。どうやら、ネグリジェ姿のアレクシアが寝惚けている私のことを手荷物みたいに担ぎながら運んでいるみたい。生死に関わるような緊急事態に慣れつつある、自分自身の順応性の高さに本気で泣きたくなってくる。


「……シア姉、今度は一体何が起こったの?マルセルさんの話にあった、巨大トカゲでも現われた?」


「その通りです。この城砦を放棄して逃げ出します」


 アレクシアと添い寝をするための貴重なネタ提供だと思ってたのに、マルセルさんが言っていた胡散臭いドラゴンの話は現実の出来事だったみたいです。それにしても、さっきは本当に惜しかったな。もう少しで、熟睡しているアレクシアのサクランボの先端をちゅーちゅー吸えたのに。ぐふぅ……お腹がかなり痛い。

 

「できれば、運び方をお姫様抱っこのほうに変えてほしいかも。手荷物みたいに小脇で担がれていると、シア姉の右腕が私のお腹に当たって地味に痛い」


「緊急事態です。非礼についてはお詫びします」


 いつも沈着冷静なアレクシアが焦ってる?


「もしかして、すでに四面楚歌の詰んでる状況なの?」


「その通りです」


 逃げ出すのは無理があるんじゃないかな?マルセルさんの説明が真実なら、城砦の近くにいるドラゴンは山ほどの大きさがあるらしいから。ドラゴンの移動速度を考えて、必死に逃げている途中でガブリと噛み殺されるのか、ゴクリと丸呑みされるかのどちらか。そんなことより、アレクシアの胸元が大きく開いちゃっている。


 ……ごめんなさい。大きなおっぱいに顔を埋めて、吸おうとした私のせいです。


「まずは寝巻きを整い直そう?その格好だと、兵士達に胸元を見られちゃうよ?」


「トカゲを刺激しないように、指示を出しました。フランツィスカ様の乗った馬車が安全確保できるまで、我々が現地点に留まり遅滞防御を実施する予定です」


 アレクシアと会話が噛み合っていなかった。


 ラーデン城砦の居住区画には、ベイツ伯爵領から派遣されている男性の騎兵や常駐している兵士達も一緒に休息しているのだ。そんな汗臭い場所で、伯爵令嬢でもあるアレクシアの胸元を肌蹴はだけさせたままにはしておけない。アレクシアのDカップもある巨乳を間近で見ていいのは、私だけが享受できる特権なのだから。


「シア姉が寝巻きを整い直さないと……私は全力で逃げるのに抵抗するよ?」


「フランツィスカ様のお命を守るためです」


「私も寝巻き姿なんだけど……」


「そんな悠長なことを聞いていられる状況ではないんです!」


 冷静さを失い、声を荒らげるアレクシアにちょっとイラっとした。堅牢な城砦の放棄を決断させるほどの巨大なドラゴンなのだ。志願して囮になろうとしているアレクシア達が決死の遅滞防御を実施したとしても、どれだけの時間を稼げるのかさえ分からないのだ。それにそれは、生還が望めない絶望的な戦闘になるはずだ。


「そのような行為は一切不要です。私は誰かの命を犠牲にしてまで、生き残りたいとは思っていませんから。そんなことよりも最期の時を迎える姿が寝巻き姿では、リーフェンシュタール王家の沽券に関わります」


 こんな恥ずかしいネグリジェ姿でドラゴンに食い殺されたら、死んでも死にきれない。前世の押し潰されて死んだ時と同じように、どうやっても避けられない死はあるのだ。死が確定されるまで必死に抗い続ける覚悟はあるけど、抗いようのない死なら素直に受け止めるしかない。


「…………」


「アレクシアはこのまま逃げてください。私は重荷になりますから」


 少しだけ憧れていたお姫様抱っこじゃなくて、手荷物みたいにアレクシアの小脇で抱えられてるからね。今の私の姿は長い金髪を前に下ろしている貞〇状態。現世に現れるためのテレビがないから、誰も呪い殺せそうにない。大きなおっぱいの脂肪を完全燃焼させる呪いなら、羨ましく思っている私でも出来そうなのに……皆、ぺったんこの私みたいな無乳になればいいんだ。


 従容として迫り来る死を受け止めようとしている私の意志が伝わったのだろう、脱兎のような勢いだったアレクシアが徐々に走る速度を緩めてくれる。そして、それまで宙に浮いたままだった私の両足が通路の床に着いた。風圧を受けてボザボサになってしまった自分の髪はとりあえず放置して、完全な無表情になっているアレクシアの胸元のボタンを掛けていく。


 アレクシアに私のことを見捨てるように言ってしまった。私のことを大切に想ってくれているアレクシアの気持ちを踏み躙る最低の言葉だと思う。


 ……だけど、身体能力で劣っている私が脱出のお荷物になることは確実なのだ。


 戦闘訓練を受けているアレクシアだけなら、生き残る確率を今よりも上昇させることができる。こんなところで、アレクシアは死ぬべきじゃない。だから、蛇蝎の如く嫌われたとしてもアレクシアだけは逃がしてみせる。


「私はアレクシアに嫌われたくありません。けれど、私が嫌われることで、アレクシアの命を少しでも永らえさせることができるのであれば、私はいくらでも嫌われましょう。私は大好きなアレクシアに生き残って欲しいのです」


「断固、お断りします。死にたがりの頼りない主を守るのも臣下の勤め。私は幼き頃に誓ったのです。全てを失ったとしても、身命を賭して、フランツィスカ様のことをお守りすると」


 私の合理的な我が儘は通じなかった。


 ◇◇◇


 ソルフィリア王国で行われる予定だった祝賀会に列席するため、前もって準備していた最上級の布で織られているドレス。そんな似つかわしくない豪華すぎるドレスを自分自身が食い殺されるために着替える。これから死ぬかもしれないというのに若干の面白みを感じる。拒否することもできない望まぬ婚約とソルフィリア王国の王都ナミュールの壊滅、この世界にいるはずもない巨大なドラゴンの出現。ソルフィリア王国に近づけば近づくほど、私の運が下降気味なのがよく分かる。


 まるで……、終わりのないドミノ倒しみたい。


 死化粧のドレスに着替え終わった私は、アレクシアを伴ってラーデン城砦の城門に向けて粛々と進み続ける。心残りがあるとしたら、無事に逃げ切れるかもしれないアレクシアを巻き込んでしまったことだ。ドレスに着替えながら、何度も逃げるように説得しようとしたけど、アレクシアは頑として聞き入れようとしなかった。


「どんなトカゲなのでしょうね」


「城砦周辺を夜間哨戒中だった騎兵が発見したそうです」


「大きさはどれくらいなのですか?」


「目測で全長二百m以上、鱗の色は濃い茶色です」


 市長のマルセルさんが、市民を連れて逃げ出した気持ちがよく分かる。自然の摂理を完全に逸脱している化け物、そんな万物を超越している存在に脆弱な人種が勝てるわけがない。巨象の前で這いずっている蟻のように、ただ踏み潰されて殺されるだけだ。全長だけで二百mを越えているドラゴンに勝てるとすれば、子供騙しの御伽噺に出てくる勇者様ぐらいなものだろう。


 目立つ馬車での脱出は早々に諦めた。同じ理由で騎馬を使った脱出も諦めるしかない。人間よりも食べ応えのある馬に興味を持たれるだけだからだ。それよりも城砦にいる全員が複数の城門から一斉に逃げ出して、何人か生き残る方がいい。脱出する経路を断定させない放射状に散れば、ドラゴンに踏み殺される人数を減らすことができるし、誰かが食べられている隙に距離を稼げる。


 開けられたままになっている城門に辿り着いてので、私は息を整えるために何度も深呼吸を繰り返す。ドレスの裾を膝上まで持ち上げて、城砦の外に走り出す準備をする。平民出身の兵士達に、剥き出しになっている自分の足首を見せる――こんなはしたない行為は王族としてアウトなんだけど……。自分が食い殺されるかもしれない瀬戸際だから、王族としての体面を気にしている余裕は皆無に近かった。


 最初の一歩を踏み出そうとした瞬間、私の頭の中で謎の声が響き渡った。

 

≪ひもじい……。お腹、減った。豚の生姜焼きが食べたい≫


 不味そうで可食部位が少ない私は薄切りされている豚肉じゃないし、生姜の汁を加えたタレでベトベトに味付けされてもいない。そもそも多年草の生姜が未だに発見されていない世界で、豚の生姜焼き(生姜の原産地は、インドを中心とした熱帯アジアという説が有力)という料理を食べられるはずがないのだ。存在しない豚の生姜焼きを知っている時点で、このドラゴンは前世の世界に関わりがあると確定してしまった。


≪生姜焼き、キャベツの千切り、マヨネーズ≫


 千切りされているキャベツに、マヨネーズをつけて食べる気なの?姿は暗くて見えないけど、このドラゴンは肉食じゃないの?というか、マヨネーズで千切りキャベツを食べる全長二百m越えのドラゴンっているの?訳の分からない私は持ち上げていたドレスの裾から両手を離して、必死に考えを巡らせる。グルメで本音が駄々漏れになっている雑食性のドラゴンだと思うけど、それ以外は正体不明。


≪生姜焼き、ご飯、味噌汁、漬物≫


 ……それ、ただの生姜焼き定食でしょ?響き続ける声に困惑した私はアレクシアと顔を見合わせる。怪訝そうに眉を寄せているアレクシアの意見が欲しい。


「アレクシア、トカゲから受けた被害はあったのですか?」


「城砦周辺の避難民は早々に逃げ散ったようですが、夜間哨戒中の騎兵は避難民の死体を一つも発見できなかったそうです」


「……腹ペコなだけで、害意は無さそうに感じるのです。対話も可能なのでは?」


「危険です」


 このまま歩いてラーデン城砦から逃げ出しても、ドラゴンの被害は無いような気がしてきた。でもドラゴンが食べたがっている生姜焼きを作り終えるまで、腹ペコなドラゴンにどこまでも追いかけられそうな予感がする。ここは素直に生姜焼きを作って、ドラゴンにお引取りしてもらった方がいいんじゃないかな?お米と味噌と漬物は無いから、ドラゴンに諦めてもらうしかないけど。


 言葉が通じるなら、ドラゴンと対話することも可能なはずだ。一方的な内容の念話をずっと言い続けているドラゴンと対話できるかどうか試してみよう。私は周囲を見渡して、ドラゴンに言伝をお願いできる生贄を探す。あっ、すぐにでも逃げ出しそうになっている顔面蒼白のキュッフル騎士爵発見。私は足音を立てないようにしながら、キュッフル騎士爵の背後に忍び寄る。


「キュッヘル男爵、トカゲと対話を試みたいのです。言伝をお願いできますか?」


「わっ、私は騎士爵です!!食われます、絶対に食われますよ!?」


「貴方のこれまでの忠節は決して忘れません。一代限りの世襲できない騎士爵位よりも、世襲できる男爵位のほうがいいのではないでしょうか?安定した税収を期待できる豊かな領地、領主を褒め称える言葉が尽きない愛すべき領民、幸せそうに笑みを浮かべるキュッヘル男爵の家族の方々。男爵の爵位はキュッヘル男爵のお子さんに必ず継がせますから、みんなの幸せのために犠牲になってください」


「……そんな」


 突然現れた巨大なドラゴンに恐れ戦いて、着の身着のままで逃げてきたマルセルさん率いる数千人の避難民の集団は、生まれ育った母国のソルフィリア王国へ追い返されて当然だったのだ。国際問題になりかねない厄介な種――自国民をリーフェンシュタール王国の人間に拉致されたという、ソルフィリア王国側の言い掛かりを避けるために、私はどうしても避難民を追い返したかった。


 リーフェンシュタール王国の領域内にある平原(ラーデン城砦周辺)で、避難民の集団を受け入れてしまったのは明らかな失敗。そして、その失敗の原因はラーデン城砦の指揮官をしているキュッヘル男爵の無責任な独断専行にある。困っている人を見捨てられない騎士道精神(自国民限定なら可)なんてものは迷惑以外の何ものでもないのだから、そんなもの野良犬にでも食べさせておけばいいんです。


 お腹を空かしているドラゴンは、豚の生姜焼き定食を作れるかもしれない避難民を追って来たのだから、全ての責任を取るべきなのは力なく項垂れているキュッヘル男爵であるべきでしょう?作り方を知っている豚の生姜焼きだけ作って、無関係の私はこの状況を完璧に放置してみせる。


「言伝の内容は『生姜焼きの作り方は知っていますが、生の豚肉と生姜がありません。お米と味噌と漬物もないので、申し訳ありませんが諦めてください。お気に召さないようでしたら、目の前で話しをしている人間をペロリとお召し上がりください』です」


「お断りさせて――」


「キュッヘル男爵、頑張ってください」


 今の私はきっと、品性に欠けたゲスな微笑みを浮かべている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る