第51話驚き

 この頃、桜はお母さんから携帯電話を返してもらいました。


 でも携帯電話は鳴りません。


 桜が演劇に浸っている内に、友達も、部活の仲間も離れていきました。


 寂しさをまぎらわす為、始めたのが文章を書くことでした。まずは童話から書こうとしましたが、頭の中がぐちゃぐちゃでまとめられません。


 何もできなくなってしまったなあ。桜は暗く重たい心を自分ではどうすることもできません。


 そんな時、メールが届きました。


『忘れていなければメールをください』


 高校の同級生でした。以前桜に花束をくれたり、ドライブに連れていってくれた人です。


 桜のメールに、返事をくれなかった人でもあります。


 今頃、何だろう。


 そう思いながらも桜はメールをします。


 久しぶりに会うことになりました。桜はそうなるようにメールの文章を考えて作ったのです。


 一縷の望みを捨てられない自分を、卑しいと思いました。

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