第50話放浪

 桜が自分も他人も嫌っている内に、訓練を受けている人の中から、就職が決まったり、就業体験が決まったりする人が出てきましたが、桜にはちっとも話がきませんでした。


 自業自得ですが、桜は周りが自分を侮っている、と、疑い深くなっていました。


 訓練の最終日が近づくと、担当者はぶっきらぼうに「どうですか。これから何をするんですか」と言いました。


 どうするかじゃねーよ、何か提案しろよ、とおごり高く思いながら、桜は


「働きたいです」


と言いました。


 桜が選べる道は二つ。A型就労継続支援という福祉施設で働くか、就労移行支援という同じく福祉施設で訓練を続け、就職を目指すことでした。


 ならば、桜に残された道は就労移行支援しかないと思いました。そう言うと、


「A型と言っても働けないのではなく、支援の下で雇用契約を結ぶんですよ」


 と担当者がA型を勧めるので、桜はますますA型はいけすかねえと頑なに拒みました。


「そうですか、いいでしょう。就労移行支援で就職を目指す。それでいいですね」


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