第49話発達コース

 集まった訓練生を桜は見ます。


 どこか抜けている……。


 桜も、そうなのかしら。


 同じ、発達障害だから。


 でも、私は違うの。何かって言われたらよくわからないけれど、とにかく違うの。


 桜は演劇で訓練したから、他の人より喋れるし、空気だってもっと読めるわ。


 そう、桜の鼻は、演劇を初めとする活動によって、ひどく高くなっていたのでした。


 でも、桜みたいに、周囲に憤っている様子の人は他にもいました。それぞれ、これまで生きてきた経歴があるので、鼻か高くなっているのも当然と言えましょう。


 皆、自分にある『大きな短所』を受け入れるのに必死なのかもしれません。


 けれど、それを一番受け入れられないのは、桜でした。


 生産性のない訓練はイライラします。いつも見守っている職員に監視されているような気がして、物珍しげに見るな! と思います。見学者なんてきたら、最悪です。こっちは動物園の動物じゃねえ!


 皆が挨拶する中、桜は無視を決め込みました。


 ある日は訓練に使う道具をケースごと床に叩きつけました。なぜそんなことをしたかというと、職員に丁寧に親切にされたからです。桜にはその人の心の声が聞こえるような気がしました。


(あなたは障害者でしょう、だから優しくしてあげるわ)


 桜は被害妄想が止まらなかったのです。


 周りが皆、敵だと思っていたし、事実、桜は孤立していきました。

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