第49話発達コース
集まった訓練生を桜は見ます。
どこか抜けている……。
桜も、そうなのかしら。
同じ、発達障害だから。
でも、私は違うの。何かって言われたらよくわからないけれど、とにかく違うの。
桜は演劇で訓練したから、他の人より喋れるし、空気だってもっと読めるわ。
そう、桜の鼻は、演劇を初めとする活動によって、ひどく高くなっていたのでした。
でも、桜みたいに、周囲に憤っている様子の人は他にもいました。それぞれ、これまで生きてきた経歴があるので、鼻か高くなっているのも当然と言えましょう。
皆、自分にある『大きな短所』を受け入れるのに必死なのかもしれません。
けれど、それを一番受け入れられないのは、桜でした。
生産性のない訓練はイライラします。いつも見守っている職員に監視されているような気がして、物珍しげに見るな! と思います。見学者なんてきたら、最悪です。こっちは動物園の動物じゃねえ!
皆が挨拶する中、桜は無視を決め込みました。
ある日は訓練に使う道具をケースごと床に叩きつけました。なぜそんなことをしたかというと、職員に丁寧に親切にされたからです。桜にはその人の心の声が聞こえるような気がしました。
(あなたは障害者でしょう、だから優しくしてあげるわ)
桜は被害妄想が止まらなかったのです。
周りが皆、敵だと思っていたし、事実、桜は孤立していきました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます