第37話あやまち
桜は演劇教室に戻って暫くは、なんとか講義を受けていました。
ところが、疑心暗鬼の心が桜の内におこります。
それは、あろうことか、お金のことでした。
演劇教室の授業料は安くないのです。残り少ない貯金を崩している桜にとって、深刻な問題でした。
劇団員は、多分無料で授業を受けているに違いない。それに、劇団の出演料だってもらっているだろう。そもそも、なぜ劇団員が教室にいるのか。無料で授業を受けているくせに、誰よりも良い役をもらっている。不公平だ。
桜は、そんな思いに囚われました。
「授業料は皆、同じです」
桜の質問に、経営者はこう答えました。
信じられない。皆で、桜に嘘をついているんだ。昔は、あんなに仲良くしていたのに……
悔しくて、桜はまた家で泣き、暴れました。
お母さんは桜に疲れきった様子で、うるさいと言う他は、何も喋りかけませんでした。
桜はどんどん追い詰められていきました。
そうこうしているうちに、また発表公演の稽古が始まります。
桜は稽古中もイライラして、おさえられなくなりました。なので、体を使う演技の練習をどんどん音を立ててしていましたが、よく知らない生徒に言われました。
「桜さんって、本当に演劇をやりたいんですか?」
どこか、悔しそうな響きを持ったその声で、桜は心がえぐられる気がしました。
私だって、本気でやりたい。でも、何もかも、止められないの……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます