第34話兆し

 体験入団の間、桜は踊ることを教えてくれた演劇仲間と一緒に、帰宅することがありました。


 彼女はとてもお洒落で、しかも実年齢よりも若く見えます。


 一緒に帰る時、彼女の様子が異様に見えたのは桜の気のせいでしょうか。


 演劇教室や踊りの時と違い、彼女は無口で、何を考えているのかわからない人に見えます。


 一緒に列車に乗ると、桜のことを皆がちらちら見ます。


 何か私が、変なのかしら。


 隣で彼女は笑います。含みのある笑顔に見えました。


 彼女と、周りの人とに、桜は何か騙されているような気がします。


 とりあえず、この気持ちは自分の心に隠しておこう。


 信用されてないと思われたら、どんなことになるかわからないから。


 桜の周りに対する行き過ぎた警戒感は、こうして作られていきました。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る